加藤喜之著「福音派ー終末論に引き裂かれるアメリカ社会」で今のイスラエル問題を考える

加藤喜之著「福音派」keiryusai.net 書評
加藤喜之著「福音派」keiryusai.net

 今話題沸騰の加藤喜之著「福音派ー終末論に引き裂かれるアメリカ社会」(中公新書)を読んでいます。

 正直、2週間近く経ってもなかなか読了できません。佐々木小次郎の「武蔵、敗れたり!」の台詞が頭の中で反芻します。加齢により、読解力、知力が劣化しました。色んな人物が登場しますが、なかなか名前が覚えられず、2ページ先で再登場すると、「えっ?この人誰だっけ?」となり、また前のページに遡っていきます。まるで、ドストエフスキーの小説を読んでいるような感じです(苦笑)。

 ジョン・グレシャム・メイチェン、ポール・ワイリック、フランシス・シェーファー、ジェリー・ファルウェル、R・J・ラッシュドゥーニー、パット・ロバートソン、ラルフ・リード、ジェームズ・ドブソン、リチャード・ランド、 マーヴィン・オラスキー…と「福音派」の何人もの重鎮(代表的伝道師ら)が登場しますが、私が知っていたのはビリー・グラハムたった一人しかおらず、これでは全く太刀打ち出来ません。

米国の人口の25%

 そもそも、「福音派」とは何かと言いますと、救い主イエスの到来を意味するギリシャ語の「良い知らせ」(エウアンゲリオン)=福音=に由来し、現在、米国の人口の25%も占め、政策に大きな影響力を与えているといいます。トランプ米大統領も福音派の大きな後押しによって当選したと言われています。著者によると、米国内で数多くあるキリスト教の宗派の中で、福音派が台頭し出したのは1940年代と、わりと最近で、強力な政治勢力となったのは70年代後半、大統領選に立候補したジミー・カーターの頃からだといいます。それ以前のアイゼンハワーやニクソン時代に強烈なカリスマ伝道師ビリー・グラハムがかなりの影響力を持ったようですが、本書ではカーター以降のレーガン、クリントン、ブッシュ、オバマ、トランプと福音派との関係に多くのページを割いています。

 福音派の最大の特徴は、聖書を文字通り解釈し、そのまま信仰する「原理主義」にあります。ですから、神による天地創造も、イエスによる数々の奇跡も、イエスの復活も事実であり、何よりも最後の審判による「終末論」は最大のキーポイントになります。福音派内にも左派から右派まであり、思想的に一枚岩ではありませんが、米国内でしばしば起きる人種差別や中絶・同性婚問題には否定的な立場です。

福音派とイスラエル

 私が注目したのは、福音派とイスラエルとの関係です。今年2月28日に、米国はイスラエルと合同でイラン攻撃を開始したから尚更です。米国内の福音派の影響で、トランプ大統領は攻撃に踏み切ったものとみられますが、これで、はっきりと、米国は仲介者でも中立者でも何でもなく、イスラエルとは表裏一体で、米国=イスラエルそのものであることを国際社会に示したからです。

 本書によると、福音派がイスラエル保護を目論むのは宗教的理由で、イスラエルを敵視するイラクやイランなどを民主化してキリスト教化してイスラエルを守る。これは福音派にとって、神の終末の約束に忠実であることを意味し、イスラエルを祝福する者は神によって祝福され、イスラエルを呪う者は神によって呪われるという「創世記」にある約束だからだといいます(152ページから一部換骨奪胎)。

 なるほど、あくまでも宗教的理由だったのですか…。しかし、この後(156ページ)に、前言を翻すのような全く矛盾するような記述に出合います。

 「福音派の熱意は、実はユダヤ民族の繁栄や福祉を求める者ではないとわかる。彼らにとってイスラエルは、携挙とイエスの再臨をもたらす重要な鍵の一つでしかない。イスラエルが世俗国家として繁栄することや、ユダヤ民族が自ら望む生き方を選択することには、彼らは関心を持っていないのである」

 うーん、どういうこと何でしょうか? 異教徒の私は理解に苦しみますが、福音派にとって、イスラエル保護とユダヤ民族無関心は全く矛盾しないということなのでしょうね。

 とにかく、国際問題、紛争・戦争を宗教からアプローチすることは大変参考になります。所詮、宗教も戦争も人間の行為なのですから。ちなみに、トランプ大統領の閣僚のヘグセス国防長官は福音派ですが、ヴァンス副大統領とルビオ国務長官、ファーストレディ、メラニア夫人はカトリック教徒です。

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