NHKスペシャル「バイオリニスト HIMARI 14歳、その響きの先に」(5月3日放送)をビデオ録画して観たら、本当に感動で打ちのめされてしまい、涙が出てきました。「天才ヴァイオリニスト」と呼ばれているHIMARIさんとやら、私自身、全く知りませんでしたし、正直、全く期待せずに、暇つぶしに観ていたら(失礼!)、どんどん画面に釘付けになりました。ビデオでしたので、2回も3回も繰り返して観てしまいました。
ベルリン・フィル、スイス・ロマンド、シカゴ響…と、今や世界の名だたる交響楽団から熱烈なオファー受ける14歳の天才ヴァイオリニスト、HIMARIの1年に密着したドキュメンタリー番組です。番組ではプライベートなことはあまり紹介されませんでしたが、本名は吉村妃鞠(よしむら・ひまり)、2011年6月、東京生まれの14歳です。父は作曲家・シンセサイザー演奏家の吉村龍太氏。母はヴァイオリニストの吉田恭子氏ということなので、彼女の天賦の才能は、ほぼ確実に両親のDNAを受け継いだものなのでしょう。
彼女の早熟伝説には枚挙に暇がなく、2歳半で早くもヴァイオリンを始め、4歳でコンクールに出場し始め、6歳でプロのオーケストラと共演しています。その6歳の2018年には、レオニード・コーガン国際ヴァイオリンコンクールで1位。同年の7歳時にベルギーのグリュミオー国際ヴァイオリンコンクールに最年少出場で1位優勝しています。出場した国内外の42のコンクール全て1位を獲得したといい、「神童」の名称を恣にしました。
11歳で名門カーティス音楽院に入学
その後、2022年には最年少のわずか11歳で米フィラデルフィアの名門カーティス音楽院に入学し、名教師アイダ・カヴァフィアンに師事します。(受験した時は、慶應幼稚舎4年生の10歳!)番組ではこのカーティス音楽院のことを中心にやっておりましたが、この音楽学校は入学年齢に制限がなく、才能が認められれば、何歳でも受け入れられます。しかも、特待奨学生として授業料が免除されます。しかしながら、難関中の難関で、世界各国からの神童が受験しますが、ヴァイオリンの場合、100人受験して合格するのは2〜3人程度だといいます。カーティス音楽院の卒業生には、指揮者・作曲家のレナード・バーンスタインらを輩出しています。
ベルリン・フィルと共演
番組の大団円は、昨年2025年3月、あの名門ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期公演にアジア人最年少ソリストとしてデビューした模様です。難曲中の難曲と言われるヴィエニャフスキ作曲「ヴァイオリン協奏曲第1番 嬰ヘ短調」を演奏し、耳の肥えた観客の度肝を抜きました。「モーツァルトの再来」という感想を述べる人もいました。
パガニーニが乗り移った?
私は、あまりYouTubeは見ないようにしているのですが、検索するとHIMARIの演奏がかなり沢山、アップされていました。何と言っても、その演奏の迫力が子どもさんとは思えず、技術的にも既に8歳ぐらいで完成している感じでした。NHKの番組ではやっておりませんでしたが、使用楽器は、貸与された1732年製グァルネリ・デル・ジェス「フェルニ」です。あの「悪魔に魂を売った男」と言われた驚異的なヴァイオリン奏者パガニーニ(1782〜1840年)が使用していたものだと言われていますので、HIMARIの演奏もまるでパガニーニが乗り移ったような感じに見えます。
HIMARIさんはどうやら完璧主義者のようで、一日8時間練習しないと気が済まない努力家でした。その度に、師匠のグレタさんは、なるべく、普通の女の子のように、ヴァイオリン以外のことをし、休息を取るように助言し、ソリストとして自分一人だけが目立つのではなく、室内楽や協奏曲など、なるべく多くの演奏家と共演するように指導していました。
グレタさんも名ヴァイオリニストとして知られ、小澤征爾や武満徹とも交流があり、HIMARIが10歳の時から見ているので、「神童から偉大な音楽家になることは並大抵ではありません。多くの神童たちがその過程で…、分かりますよね。本当に難しいことなのです。私の最大の責任は彼女をどう大人に育てていくかです」とインタビューに応えていました。
いやはや、我々は、まさに神童から巨匠になる過程を同時進行で見ることが出来る、運の良い時代に巡り合わせたものです。ただし、彼女のHPを見たら、国内で近々開催されるコンサートは全て売り切れでした。でも、今秋の公演は抽選に当たれば購入出来そうです。


コメント
5年前にYouTubeでHIMARIさんのツィゴイネルワイゼンを聞いたとき、ハイフェッツの生まれ変わりか、と驚愕しました。それ以来ずっと注目しています。当時(2021年)、まだそれほど騒がれていなかったので、9歳のHIMARIさんの生演奏を渋谷オーチャードホールで聞くことができました。手垢のついた表現ですが、彼女と同時代に生きていてほんとうに良かった、としみじみ思いますね。