神童から巨匠へ 天才ヴァイオリニストHIMARIには感動しました

Bartolomeo Giuseppe Guarneri 'del Gesù', violin 'Il Cannone, Paganini', Cremona 1743(出典 Wikimedia commons) 雑感
Bartolomeo Giuseppe Guarneri 'del Gesù', violin 'Il Cannone, Paganini', Cremona 1743(出典 Wikimedia commons)

NHKスペシャル「バイオリニスト HIMARI 14歳、その響きの先に」(5月3日放送)をビデオ録画して観たら、本当に感動で打ちのめされてしまい、涙が出てきました。「天才ヴァイオリニスト」と呼ばれているHIMARIさんとやら、私自身、全く知りませんでしたし、正直、全く期待せずに、暇つぶしに観ていたら(失礼!)、どんどん画面に釘付けになりました。ビデオでしたので、2回も3回も繰り返して観てしまいました。

 ベルリン・フィル、スイス・ロマンド、シカゴ響…と、今や世界の名だたる交響楽団から熱烈なオファー受ける14歳の天才ヴァイオリニスト、HIMARIの1年に密着したドキュメンタリー番組です。番組ではプライベートなことはあまり紹介されませんでしたが、本名は吉村妃鞠(よしむら・ひまり)、2011年6月、東京生まれの14歳です。父は作曲家・シンセサイザー演奏家の吉村龍太氏。母はヴァイオリニストの吉田恭子氏ということなので、彼女の天賦の才能は、ほぼ確実に両親のDNAを受け継いだものなのでしょう。

 彼女の早熟伝説には枚挙に暇がなく、2歳半で早くもヴァイオリンを始め、4歳でコンクールに出場し始め、6歳でプロのオーケストラと共演しています。その6歳の2018年には、レオニード・コーガン国際ヴァイオリンコンクールで1位。同年の7歳時にベルギーのグリュミオー国際ヴァイオリンコンクールに最年少出場で1位優勝しています。出場した国内外の42のコンクール全て1位を獲得したといい、「神童」の名称を恣にしました。

11歳で名門カーティス音楽院に入学

 その後、2022年には最年少のわずか11歳で米フィラデルフィアの名門カーティス音楽院に入学し、名教師アイダ・カヴァフィアンに師事します。(受験した時は、慶應幼稚舎4年生の10歳!)番組ではこのカーティス音楽院のことを中心にやっておりましたが、この音楽学校は入学年齢に制限がなく、才能が認められれば、何歳でも受け入れられます。しかも、特待奨学生として授業料が免除されます。しかしながら、難関中の難関で、世界各国からの神童が受験しますが、ヴァイオリンの場合、100人受験して合格するのは2〜3人程度だといいます。カーティス音楽院の卒業生には、指揮者・作曲家のレナード・バーンスタインらを輩出しています。

ベルリン・フィルと共演

 番組の大団円は、昨年2025年3月、あの名門ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期公演にアジア人最年少ソリストとしてデビューした模様です。難曲中の難曲と言われるヴィエニャフスキ作曲「ヴァイオリン協奏曲第1番 嬰ヘ短調」を演奏し、耳の肥えた観客の度肝を抜きました。「モーツァルトの再来」という感想を述べる人もいました。

パガニーニが乗り移った?

 私は、あまりYouTubeは見ないようにしているのですが、検索するとHIMARIの演奏がかなり沢山、アップされていました。何と言っても、その演奏の迫力が子どもさんとは思えず、技術的にも既に8歳ぐらいで完成している感じでした。NHKの番組ではやっておりませんでしたが、使用楽器は、貸与された1732年製グァルネリ・デル・ジェス「フェルニ」です。あの「悪魔に魂を売った男」と言われた驚異的なヴァイオリン奏者パガニーニ(1782〜1840年)が使用していたものだと言われていますので、HIMARIの演奏もまるでパガニーニが乗り移ったような感じに見えます。

 HIMARIさんはどうやら完璧主義者のようで、一日8時間練習しないと気が済まない努力家でした。その度に、師匠のグレタさんは、なるべく、普通の女の子のように、ヴァイオリン以外のことをし、休息を取るように助言し、ソリストとして自分一人だけが目立つのではなく、室内楽や協奏曲など、なるべく多くの演奏家と共演するように指導していました。

 グレタさんも名ヴァイオリニストとして知られ、小澤征爾や武満徹とも交流があり、HIMARIが10歳の時から見ているので、「神童から偉大な音楽家になることは並大抵ではありません。多くの神童たちがその過程で…、分かりますよね。本当に難しいことなのです。私の最大の責任は彼女をどう大人に育てていくかです」とインタビューに応えていました。

 いやはや、我々は、まさに神童から巨匠になる過程を同時進行で見ることが出来る、運の良い時代に巡り合わせたものです。ただし、彼女のHPを見たら、国内で近々開催されるコンサートは全て売り切れでした。でも、今秋の公演は抽選に当たれば購入出来そうです。

コメント

  1. 大鹿 より:

    5年前にYouTubeでHIMARIさんのツィゴイネルワイゼンを聞いたとき、ハイフェッツの生まれ変わりか、と驚愕しました。それ以来ずっと注目しています。当時(2021年)、まだそれほど騒がれていなかったので、9歳のHIMARIさんの生演奏を渋谷オーチャードホールで聞くことができました。手垢のついた表現ですが、彼女と同時代に生きていてほんとうに良かった、としみじみ思いますね。

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