30年以上ぶりにクラシック音楽業界の人と再会

「テンポプリモ」が招聘を手掛ける公演のパンフレット keiryusai.net 雑感
「テンポプリモ」が招聘を手掛ける公演のパンフレットkeiryusai.net

 6月26日(金)、かつて仕事を通して知り合った人と30年以上ぶりに奇跡の再会を果たしました。レコード会社、ポニーキャニオンのクラシック部門を担当していた遠藤さんという人で、当時20歳代だった彼も還暦を過ぎて、いまだに現役で、NHKやオーケストラ団体事務局等、数カ所の転職を経て、今はクラシック音楽公演招聘会社に勤めているというのです。

 彼と会うきっかけを作ってくれたのは、元会社(時事通信)の文化部の後輩でクラシック音楽担当の渡辺君でした。「元ポニーキャニオンの遠藤さんという方と先日お会いしたら、高田さんの名前が出ました。私も色々取材してますが、出先で先輩の名前をお伺いするのは初めてです」といった内容でした。

音楽招聘会社「テンポプリモ」

 そこで渡辺君から遠藤氏の連絡先を聞き出し、彼にメールを出したところ、彼も「いつかお会いしたいですね」という話になり、たまたま、6月26日は、築地で通訳ガイドの研修があって久しぶりに都心に出るので、その時にランチでもしましょう、という話になったのです。遠藤さんの勤める音楽招聘会社は「テンポプリモ」といって、東銀座の時事通信社の隣りの隣りのビルにあったからでした。築地から東銀座まで歩いて10分ぐらいの距離です。

 当日は、朝8時からサッカーW杯、日本対スウェーデン戦がありましたが、そのガイド研修で生(なま)で見ることが出来ず、残念でしたが、後から遠藤氏から結果を聞きました。

 30年以上ぶりの再会ですから、お互いに「面影」すらなく、「はじめまして」といった感じでした(笑)。30年間の積もりに積もった話ですから、尽きることはありませんでした。思えば、時事通信は専門記者を養成する会社では全くなかったので、色んな仕事をたらい回しにさせられました。記者職で採用されましたが、地方支局長として営業もさせられましたし。ですから、クラシック音楽担当も確か、3年か4年ぐらいしかなかったので、よくぞ遠藤さんは私のことを覚えていてくれた、と思いました。

恐ろしいほどの記憶力

 彼は、私だけではなく、当時私と同じ頃にクラシック担当だった同業他社の名前もスラスラ出てきて覚えていたので驚きました。例えば、朝日新聞は前田記者(目下、行方知らず)、現在も活躍中の毎日新聞の梅津編集委員、読売新聞の副島記者(読売交響楽団事務局の配属となり、その後体調を崩して郷里鹿児島に帰ったそう)、日経の池田記者(現在も評論家としてバリバリに活動中)、産経新聞の江原記者(「モーストリー・モーツァルト」の編集長などを歴任し、現在も現役で評論活動)、共同通信の百瀬記者(30代後半でお風呂場で急死されたらしい)。それに、コロムビア・レコードの村山さん(現在、北海道在住)、フィリップス・レコードの川越さん(彼も体調崩して郷里岐阜に)といった人も覚えていて、彼の恐ろしいほどの記憶力が、こうした私との再会に結びついたものだと思いました。

ポニーキャニオン退社

 何故、彼がポニーキャニオンを退社したのか具体的な話も聞きました。ポニーキャニオンは、フジサンケイグループで、ラジオのニッポン放送の録音部門が発展して1955年に創業され、1980〜90年代はチャゲ&飛鳥や田原俊彦らミリオンセラーを出すタレントに恵まれて、そのお陰で、「売れない」(失礼!)クラシック部門を立ち上げることが出来るようになったそうです。ちょうどベルリンの壁が崩壊し、東欧諸国が民主化されたため、チェコやロシアやポーランドなどの交響楽団との契約も格安の料金で出来たそうです。

 しかし、次第に、音楽業界では、レコード製作よりも、原盤権という著作権を持った者が勝ちだということが分かり始め、タレントが所属していたヤマハやジャニーズ(当時)などの事務所が、ポニーキャニオンから原盤権を引き上げて、自らレコード会社を作るようになったというのです。当然、ポニーキャニオンは売れ筋のドル箱がなくなり経営がピンチになります。その皺寄せが、「売れない」クラシック部門に押し寄せ、縮小、廃部にまで追い込まれてしまったそうです。

NHKに中途入社

 クラシック部門から通信販売部門に回された遠藤さんは退職し、ある交響楽団の事務局に入り、鬱々とした日々を過ごしていましたが、ある日、新聞の広告で小さく「NHKの中途採用募集」を見つけ、応募したところ、4次の面接の末、見事採用されたというのです。時事問題の筆記試験は全く出来なかったそうですが、自己アピールとクラシック音楽業界の今後の課題という作文が好感されたようでした。でも、後で採用された時、部長さんに「何故、自分でしたか?」と聞いたところ、「筆記はダメだったけど、最後に残った2人のうち、君が一番若かったからだよ」と半分冗談で言われたそうです。彼は当時、34歳でした。

来日交響楽団のマネジャーに

 NHKには何年間かいたそうですが、そのうち、自分のやりたいクラシック音楽ではなく、民謡の責任者を任されそうになっため、退局し、フラフラしているところ、大学時代のオーケストラ部(彼は、何とオーボエ奏者だったそうです)の後輩に当たる社長さんの好意で、今の会社に就職することが出来たそうです。来日した交響楽団の地方巡業の際、付き添うマネジャーのような仕事もしているそうです。

ランチは銀座の「マトリキッチン」で

 ランチは、昔よく通っていた銀座のモルドバ料理「マトリキッチン」に2年ぶりに行ったら、マスターの権田さんが私のことを覚えていてくださり、「あら、久しぶりですね」と言われてしまいました。以前、ここのランチは1000円ぐらいでしたが、今は1300円に値上がっておりました。帰りに私が二人分払おうとしたら、遠藤氏は「社長から言われて来ましたから、ここは私に」と言って、ご馳走になってしまいました。いやあ、気前の良い社長さまに感謝です。

 遠藤さんは「クラシック音楽の公演は、高齢者が多く、また、招聘者として、何が当たるのか、何が不入になるのかさっぱり分からない」と言うので、私は「まるで博打みたいだね」と、つい本音を言ってしまいました。そしたら、彼は「そうそう、その通りです。博打です」と納得してくれました。

 それでは、公演チケットが売れるようにするにはどうしたら良いのか? 私は「やはり、広告宣伝でしょう。今はネット広告では?」と言ったら、彼は「ウチもホームページを作って力を入れてますが、クラシック好きとか、関心がある人とか、特定の人しか見てくれないのです。ですから、今でも、古い媒体と言われている不特定多数が接する新聞やラジオ、テレビは効果あると思っているんですよ」と、彼も古い世代ですから、そう打ち明けてくれました。

報道機関としての自負を!

 私もオールドメディア出身ですが、考えて見れば、そのオールドメディアこそが正式の報道機関です。SNSなどネット情報は、裏を取っていない真偽不明の噂話です。

 報道機関がそんな噂話を大きく取り上げるからいけないんだ、と私なんか後で一人で思ってしまいました。

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