現代にも多大な影響を与える聖書にまつわる話

「聖書」 keiryusai.net 歴史
「聖書」 keiryusai.net

 パレスチナ自治区ガザの食糧配給所への空爆や銃撃で多数の死傷者が出ているという報道に接する度、心を痛め、非人道的行為を憚らないイスラエル・ネタニヤフ政権を非難したくなります。こういうことを書けば、直ぐに反ユダヤ主義のレッテルを貼られ、米ハーバード大学への留学は不可能になることでしょうが、国際世論として声を挙げなければいけません。

 本日は、ディアスポラの末、ポグロムやホロコーストといった痛ましい体験を経たユダヤ人が反転して、逆に、アラブ・パレスチナ人らを迫害するようになってしまったイデオロギー(思想形態)を知りたくて、ユダヤ教の聖典といわれる「旧約聖書」を少しずつ読み始めている話を書きます。何しろ、旧約聖書には、「殺してはならない」(「出エジプト記」十戒)と書かれているからです。

神話にも一遍の事実が

 旧約聖書といえば、「神話」ですから、現実ではあり得ない荒唐無稽のことばかり書かれていると、異教徒の人なら思い込みますが、一概にそう断定できない面も多少ながらあることが最近では分かって来ています。ただし、人間は神が創造したもので、ダーウィンの進化論を否定する原理主義者の人々もいるので、旧約聖書の記述を受け入れない人も多くいることは確かですが。

 以下は、私が、ネットではなく、新聞、雑誌、書籍、テレビ、ラジオといったオールドメディアから仕入れてきた情報(知識)です。

ユダヤ人とアラブ人は異母兄弟

 一番驚いたことは、現在、敵対関係にあるユダヤ人とアラブ人は、もともとセム語族の異母兄弟だったということです。

 旧約聖書によると、神が創造したアダムとイヴの子孫の10代目に当たるのが、「ノアの箱舟」で有名なノアです。洪水の中で箱舟に乗って生き残ったノアの子にセムがいますが、このセム系の子孫が、アダムから数えて20代目に当たるアブラハムでした。

 この100歳のアブラハムの妻サラとの間に生まれたのがイサクで、このイサクの子ヤコブの系統がユダヤ人に繋がります。その前に、86歳のアブラハムと、サラのエジプト人の女奴隷ハガルとの間に生まれた子イシュマエルは、アラブ人に繋がっていくというのです。(「創世記」16ハガルの逃亡と出産、21イサクの誕生、鶴見太郎「ユダヤ人の歴史」)

 イスラム教徒がコーラン(クルアーン)だけでなく、旧約聖書も重視するのは、それゆえだったんですね。

ソドムの滅亡は隕石か?

 もう一つ、旧約聖書で有名な話に「ソドムの滅亡」(「創世記」19)があります。「主は、罪深いソドムとゴモラの町に天から硫黄の火を降らせ、町の全住民、地の草木もろとも滅ぼした」とあります。これも、神話らしい比喩だというのがこれまでの定説でしたが、2015年に発掘されたヨルダンのタル・エル・ハマム遺跡がソドムではないかと唱える考古学者、宇宙物理学者が現れました。(NHK「フロンティア」

 タル・エル・ハマムは青銅器時代(紀元前3000年頃から)の巨大な文明都市でしたが、紀元前1700年頃、忽然と消えます。その原因が巨大隕石の衝突によるものではないか、というのです。隕石が衝突すれば、巨大なクレーターがあるはずですが、発見されませんでした。ということは、エアバーストといって、隕石が地表に衝突する前に空中で爆発したのではないか、というのです。これはかなり説得力がありました。旧約聖書がまるっきりのフィクションではないような気がして来ました。

狂信的な福音派

 しかし、狂信的な行き過ぎはよくありません。欧米では福音派と呼ばれる進化論を否定し、聖書を忠実に守り、ハルマゲドン(終末戦争 「ヨハネの黙示録」)を信じる原理主義的宗派がありますが、政治にかなり大きな影響力があります。特に、米国のトランプ大統領は選挙のために彼らの票を利用し、米国のイスラエル政策に多大な影響を与えている様をNHK-BS世界のドキュメンタリーでやっておりました。日本では全く報道されていないことばかりでしたので、驚くばかりでした。

 特に多大な影響力を持つ牧師として、「イスラエルのためのキリスト教連合」の創始者ジョン・ヘイギー牧師(サン・アントニオ・コーナーストーン教会)と、在イスラエル米国大使館をテルアビブからエルサレムに移転したトランプ大統領を熱烈に支持するロバード・ジェフレス牧師(ダラス・ファースト・バプテスト教会)の2人に焦点を当てておりました。2人とも、米南部テキサス州を拠点にしていたのですね。信者らの狂信的な熱狂ぶりも映し出されていましたが、こういった米国民が米国のイスラエル政策を大きく左右しているのが初めて分かりました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました