米中は大戦中の同盟国だったのか?

習近平・中国国家主席(出典 Wikimedia commons) 歴史
習近平・中国国家主席(出典 Wikimedia commons)

 2026年9月24〜26日、米ワシントンで開催された米中首脳会談と晩餐会で、日本にとっては、いささか「歴史歪曲」と捉えかねない「史実」が堂々と、両首脳から公にされ、世界に発信されました。しかも、会談後の合意事項にも「米中が第2次世界大戦中の同盟国であり、肩を並べて戦い勝利した」と盛り込まれました。

 日米同盟を金科玉条としている高市早苗首相にとっては、信頼しているドナルドから梯子を外された気分でしょう。

あまりにも飛躍的

 トランプ大統領の「米国は第2次世界大戦中、中国とは同盟国でさえあった」という発言は、あまりにも飛躍的です。確かに、米国は対日戦争の一環として全面的に中国を「援蒋ルート」等を通じて支援して来ました。しかし、米中同盟を締結していたわけではなく、訪米した蒋介石夫人の宋美齢らの働き掛けもあり、あくまでも、蒋介石の国民党政権である中華民国を支援したに過ぎません。だから、同盟関係にあったのは、現在の中華人民共和国=中国共産党政権ではありません。

 米国と中華人民共和国(1949年建国)が同盟国でなかった、という証明として、第2次大戦中は、中華人民共和国は成立していなかったことに加えて、その後、朝鮮戦争(1950〜53年)、ベトナム戦争(1955〜75年)で、間接的に米国と中華人民共和国とが敵国同士として戦ったという史実があります。

 また、習近平国家主席の「日本の軍国主義の侵略者に立ち向かった」という発言も飛躍的です。立ち向かったのは、主に国民党の蒋介石政権の方です。むしろ、中国共産党は、国民党を追い落とすために、日本を利用したという史実もあります。しかも、中国共産党が、国民党との内戦で勝利を収めた勝因の一つが、日本の敗戦で関東軍が残した武器弾薬や装甲車などを、日ソ中立条約を一方的に破壊して侵攻した極悪非道のソ連から譲り受けて戦力を拡大したことにありました。中国共産党は、ソ連と大日本帝国に感謝しなければいけません(とはいえ、侵攻した日本の免罪符にはなりませんが)。

どうなる台湾有事?

 本来なら、米国の同盟国とは、蒋介石らが「逃亡」した台湾のはずです。嗚呼、それなのに…。今回の米中会談の合意事項の「米中が第2次世界大戦中の同盟国であり、肩を並べて戦い勝利した」という文言が今後どれくらい効力を発揮するのか分かりませんが、「台湾は核心的利益の中の核心」と位置付ける中国と、「1979年1月1日の国交正常化に伴い、中華人民共和国を中国の唯一の正当な政府と承認」している米国なので、「台湾有事」の際は、密約によって米国は動かない可能性が出て来ました。

 政商あがりの極右の自国第一主義者が超大国米国の最高司令官に座っている限り、世界第2位の軍事・経済超大国になった14億人の人口とマーケットを擁する中国と、GDP5位に転落しつつある超少子高齢化で国力衰退の日本とで、どちらか選べと言われれば、米国は迷わず、ディールとして、今回、同盟国に「格上げ」した中国の方を選ぶことでしょう。

つまり、今回のトランプ氏の発言は、日米同盟よりも米中同盟を重視し、日本より中国を優先すると宣言したことに他ありません。

 となると、「台湾有事の際は、集団的自衛権を行使できる」などと発言し、中国から「新型軍国主義」と名指しされた高市首相はばかを見たことになりますね。

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