生きがいとは? 「リンボウ先生 老いてのたのしみ」を読んで

林望著「リンボウ先生 老いてのたのしみ」keiryusai.net 書評
林望著「リンボウ先生 老いてのたのしみ」keiryusai.net

 恐らく、年配の方しか興味がないか、読むことがない本を読んでおります。林望著「リンボウ先生 老いてのたのしみ」(祥伝社新書、2025年12月10日初版)です。

 著者は、「イギリスはおいしい」(平凡社)がベストセラーになり、日本エッセイスト・クラブ賞を受賞(1991年)した作家・国文学者です。確か、ニーチェのような「文献学」「書誌学」がご専門で英ケンブリッジ大学等に留学されたと思います。もう30年以上昔ですが、私は著者とお会いしてインタビューをしたことがあります。場所は東京・中央線沿線の駅近のマンションでした。生活臭がなかったので、恐らく、「書斎」か事務所として別に購入したか、賃貸の部屋だったかもしれません。30年以上昔なので細かいことは忘れてしまいましたが、強烈な印象として残っていることは、彼のその「佇まい」でした。いかにも、聡明な学者然としているといいますか、勿論、言葉遣いは大変丁寧であることは当然のことながら、背筋を伸ばして座った姿勢、言葉の節々から漏れてくる説得力のある思慮深さが背後からのオーラのような輝きと共に迫って来ました。

「則天去私」の姿

 口髭を生やしておりましたが、何ら衒いもないのです。照れたり、はにかんだりしません。自信家に見えるかもしれませんが、それとは違った自然な振る舞いで写真撮影にも応じてくださいました。私はそこに超然とした、漱石の「則天去私」の姿を見出したのです。(ちょっと褒め過ぎかな?)

 考えてみると、彼は1949年生まれですから、当時、まだ40代半ばの若さだったんですね。それにしては風格がありました。この本にも書かれていますが、著者は50歳で東京藝大助教授の地位を投げ打って、フリーの執筆業に専念して、「源氏物語」や「平家物語」などの「謹訳」などを手掛けるなど多くの著書を発表して来ました。

老後の生活の「指南書」

 この本には、老後を迎える(た)人のための「指南書」みたいなことが書かれています。そのために、著者の個人的な来歴にも触れています。「SNSとは関わらない」とか「NISAは勿論、投資には手を出さない」「無駄遣いはしない」「大学の同期会や高校のクラス会は必ず欠席」といったことが書かれています。

年金が月8万円⁉️

 林氏は、自分の職歴に触れ、「25歳から30歳まで非常勤講師、30歳から43歳まで東横短大、43歳から50歳まで東京藝大で、定年になる前の50歳で退職したのでそれぞれの大学から貰った退職金などは合計200万円ぐらいだ」というのです。しかも、「国民年金、私学共済金、国家公務員年金を全部合わせても、夫婦で1カ月8万円ぐらいしか支給されません」というのです。えっーー?本当ですかねえ? 驚いてしまいました。当然、普通でしたら、これではとても生活できませんが、林氏は、著書の印税が入って来るので「人並み」以上?の生活出来ているのかもしれません。それにしても、驚きました。

 そのせいか、「『私はお金がないから節約しています』なんて卑屈になる必要は全くありません」などという著者の主張は、妙に納得できました。

趣味を持つこと

 43歳から声楽を始めたという著者は、「やりたいことは、老人になっても、いつから始めても良い」などと趣味を持つことを勧めています。ちなみに、林氏は、声楽のほかに、詩、絵画、俳句、短歌、能楽、写真、古書蒐集、旅、車の運転、料理、散歩などの趣味があり、一つ一つ解説しておりました。出来たら、我流ではなく、一流のプロに習うことをお勧めしております。

 要するに、生きがいを持つということなのでしょう。老後は楽しんだもん勝ちですね。そう思いました。

流行を追わなくても

 私の場合、音楽が趣味でしたが、最近、日本の音楽業界が総出になって立ち上げた「MUSIC AWARDS JAPAN」なる賞とアーチストのパフォーマンスをチラッて見ましたが、皆、同じ声と顔に見えて、曲も単調で、全くついていけませんでした。単に流行についていけなくなっただけで、「爺は引っ込め!」と言われそうですが、全く感動できないのです。

 特に、音楽は感性芸術ですから仕方がないですね。その人が人生で一番多感な時期に聴いた音楽が一生支配していくものですから。そんなわけで、私は、多感な時期によく聴いていた1960年代〜70年代の洋楽(ビートルズ、ストーンズ、バーズ、カルロス・ジョビン、ビル・エヴァンス)や、好きなバッハ、モーツァルト、ベートーベン、ブラームスを中心に聴いています。

 最新の流行を追わなくても、今は、古い音楽でも、YouTubeやスポッティファイなどで簡単に聴けますからね。

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