正垣泰彦著「サイゼリヤの法則」

正垣泰彦著「サイゼリヤの法則」(KADOKAWA) 書評
正垣泰彦著「サイゼリヤの法則」(KADOKAWA)

なぜ「自分中心」をやめると、ビジネスも人生もうまくいくのか?

  正垣泰彦著「サイゼリヤの法則」(KADOKAWA、2024年3月22日初版)を読了しました。副題に「なぜ『自分中心』をやめると、ビジネスも人生もうまくいくのか?」とありますが、私はビジネス書や経営の参考書として読んだわけではありません。勿論、書店ではビジネス書の棚に置かれていますけど、私自身は、人生訓として、そして何よりも、手に取ってみて、科学書的側面があったので読んでみたのでした。特に私が目下、最も関心がある量子力学なんかも出てくるのです。

 それもそのはず。著者の正垣泰彦氏(1946年、兵庫県生まれ)は、イタリアンレストランのチェーン店(フランチャイズではなく直営店)「サイゼリヤ」の創業者ですが、経営や商業とは全く畑違いの東京理科大学を卒業した方だったのです。サイゼリヤといえば、国内外に1500店舗も展開し、年間客数が2億人を超えているので、恐らく知らない人はいないと思います。私も一人ではなく、友人と何回か行ったことがあります。サイゼリヤの売りである「ミラノ風ドリア」が300円、グラスワインが100円という恐ろしく安価で「大丈夫なのかなあ」と怯えたこともありました。でも、この本を読んで初めて安さの秘密というかカラクリが分かり、今度は一人で行って酔っ払ってみようかと思いました。

失敗と挫折の連続

 創業者の正垣氏は学生時代から起業した人でしたが、特に商才や先見の明に恵まれた人ではありませんでした。むしろ、その逆です。1967年、千葉県市川市にサイゼリヤ1号店を開業しますが、そこは最寄り駅から遠く、商店街の長屋の2階です。1階は八百屋さんで野菜などを台に陳列しているので2階への入り口が見つかりにくい。また、入り口のテントの下でアサリ屋さんが行商していて、入り口を塞ぎ、はっきり言って邪魔な最悪の環境でした。しかし、正垣氏は文句の一言も言わず、逆転の発想で、八百屋さんからはレタス等を仕入れて、新鮮なサラダを出すことが出来るようになり、アサリはボンゴレビアンコにして店の看板メニューにすることが出来たというのです。

 しかし、開店から1年9カ月後、最悪の事態が起きます。当時は朝の4時まで深夜営業をしていたのですが、水商売や暴力団関係の客も多く、客同士の喧嘩も日常茶飯事だったといいます。そんな時、ある客が喧嘩の最中にストーブを投げて、店が大火事になったというのです。正垣氏は客と従業員らを最初に脱出させ、本人は2階から飛び降りて九死に一生を得たといいます。(その後、店は同じ場所で再開)

人のために尽くす

 このように、当初は、失敗と挫折の連続でしたが、正垣氏は生来の人生哲学に目覚めます。それは、自己中心の考え方を止めて、何事も「人のため」に尽くすことです。人生が自分の思い通りにならないのは、世界が自分を中心に回っているわけではない。お互いに関わり合い、助け合い、分かち合って生きていることが正垣氏には分かってきたのです。この利他主義の発想から、価格を大幅に下げていきます。当初は3割引でしたが、あまり客数は変わらない。仕方がないので5割引、つまり半額にしたのですが、それでも変わらない。そこで、7割引にしたら、どんどん客数が増えていったというのです。しかし、ビジネスですから、利潤を上げなければなりません。そこから正垣氏の反省と努力と改善が生まれていきます。そのやり方は逆転の発想で、原価計算など細かい過程はすっ飛ばして、お客さんが満足してくれそうな「売れる価格」を先に決めます。価格を安くするには、正垣氏は①仕入れを安くして原価を下げるか②運搬・貯蔵、加工コストを下げるか③作業の無駄を省いて生産性を上げるか、この三つしかないという結論に辿り着きました。

厨房から包丁が消えた

 この中で、私が一番驚き、そして「なるほど、そうやって価格を下げていたのか」と納得したのは、「厨房から包丁が消えた」という話です。これは恐らく企業秘密なんでしょうが、そして、ここまで具体的には書かれていませんが、サイゼリヤの料理は、加工工場で真空冷凍パックか何かにした調理品を各店舗に輸送し、お店では手を加えずにチンをしてお客さんに出しているということです。それでも、正垣氏は「飛行機のファーストクラスには、鍋も包丁もありません。それでも一流ホテル並みの料理が出てきます」と胸を張っておられます。確かに「発想」次第ですね。これなら価格を抑えられます。

自分が「正しい」と思うことは間違いで、「間違っている」と思うことが正しい

 この記事の最初に、私は「科学書的側面があったので読んでみた」と書きましたが、正垣氏のその科学的見地と人生訓を引用させて頂き、それに対する個人的見解を添えてみたいと思います。

エントロピーの増大とは「物事は放置すると、すぐに乱雑で無秩序で複雑な方向に向かい、自発的には元に戻らない」原理のことで、「これでいい」と現状に満足したところから、エントロピー増大の法則と同じように、人は乱雑で無秩序な方向に向かい、進歩できなくなってしまう。(25~26ページ)

正垣泰彦著「サイゼリヤの法則」

 確かに、机の上が散らかっているだけで、仕事にやる気をなくします。乱雑な人には「エントロピーが増大していますよ」と婉曲な表現で注意すれば、角が立たないでしょう。相手はポカンと口を開けているだけかもしれませんが(笑)。

自分が「正しい」と思うことは、たいてい間違っている。自分が「間違っている」と思うことが意外にも正しい。(105ページ)

正垣泰彦著「サイゼリヤの法則」

 これは名言だと思います。人は自分の過ちをなかなか認めたがりませんが、この名言を頭に入れて行動すれば、難行も円滑に進むと思います。

自分を救えるのは自分自身だけ。その苦しみは、あなたを幸せに導くために起こっている。(131ページ)

正垣泰彦著「サイゼリヤの法則」

 うーん、これだと親鸞の他力本願を否定しているようにみえます。人間はか弱い存在ですから、たまには人に頼っても良いのではないかな、と思っています。ね、Mさん?

物理学の考え方では、エネルギーは伝達するため、波長が合うエネルギーを持つ人間同士が惹かれ合って組織が形成される。(161ページ)

正垣泰彦著「サイゼリヤの法則」

 これは、ウマが合うかどうかの問題なので、認めざるを得ないでしょう。個人的には、挨拶も出来ないような嫌な奴とは無理に付き合う必要はないと思っています。

この世の全てはエネルギーであり、全てが連関し合いながら、調和や均衡に向かって、より幸せな方向で変化し続けている。現実世界の本質は「停滞」ではなく「変化」だ。(217ページ)

正垣泰彦著「サイゼリヤの法則」

 確かに、万物は流転し、諸行無常です。だからこそ、人は変化を恐れずに、人生は素晴らしいと思うべきかもしれません。

熱エネルギーの法則が示すように、エネルギーは高い方から低い方へ流れる。つまり、与えることで、皆に喜んでもうらうことこそが、この世の真理なのではないか。(234ページ)

正垣泰彦著「サイゼリヤの法則」

 これが著者の結論でしょうが、私も大賛成です。説得力がありました。今後、著者が薦めるように、1%でも自分よりも「人のため」を優先するつもりです。この本を読んでよかったと思いました。

【追記】親友のお墓参り(2024年4月27日)

 4月27日は3年前に急逝した親友の神林康君の命日ということで、彼のお墓参りに行って来ました。

 彼のお墓といいますか、共同墓地は、千葉県の「印西牧の原」駅から歩いて20分ほどの真言宗豊山派大生寺にあります。自宅から2時間半は掛かりました。墓参の後、昼時でしたので、駅近くにある「サイゼリヤ」に入ってみることにしました。

千葉県印西牧の原の「サイゼリヤ」
千葉県印西牧の原の「サイゼリヤ」

 私は操觚者ですから、ミラノ風ドリアが300円、グラスワインが100円が本当かどうか確かめてみたかったのです。

千葉県印西牧の原の「サイゼリヤ」のミラノ風ドリア300円とデカンタワイン250ml200円
千葉県印西牧の原の「サイゼリヤ」のミラノ風ドリア300円とデカンタワイン250ml200円!

 そしたら、本当でした!4人掛けの席に案内されたので、目の前に神林君がいるつもりで、彼に話し掛けながら1人でワイングラスを傾けていたら、流石に酔っ払いました(笑)。(サイゼリヤの国内外の店舗数は、2023年3月の時点で1547店舗でしたが、年間の利用客は1億9000万人でした!)

 注文したのは、わかめサラダ350円、ミラノ風ドリア300円、デカンタワイン250ml200円、生ハム320円、小エビの唐揚げ300円、グラスワイン100円。締めて1570円でした。確かに安い。これだけ他の店で注文すれば2000〜3000円になるでしょう。味も飛行機のファーストクラス並み?

 また、来年も同じコースで再訪してみたい、と思いました。

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