多くの人は見たいと欲する現実しか見ない

東京駅前の八重洲ブックセンター跡地 暴力団関係者が立ち入るのでしょうか? 雑感
東京駅前の八重洲ブックセンター跡地 暴力団関係者が立ち入るのでしょうか?

 昨晩は、大学時代の後輩のHさんから先日、「どうしても直接お話したいことがあります」との連絡があり、東京・御徒町駅前の「吉池食堂」で懇親致しました。土曜日ながら勤労感謝の日の祝日ということもあって大変な混雑で「超満員御礼」でした。この店は9月末に小中学時代の旧友との飲み会で初めて利用しました。予約を受け付けてくれなかったので、今回もそのまま予約せず行きましたら、何と35分も待たされました。恐らく、もう二度と行かないでしょうね(笑)。

 Hさんは事前に山ほどの「資料」をメールで送ってくれました。「コロナワクチンの不都合な真実を暴露したフランス人の医者が逮捕監禁され今でも行方不明になっていること」「内閣府によるムーンショット計画」「暗号通貨の普及戦略」などです。あまりにも複雑なので、私も新しく買った(笑)プリンターで印刷してみましたが、紙で読んでもすんなり理解できる内容ではありませんでした。

 そもそもHさんの初歩的な疑問として、「マスコミは何故、不都合な真実を報道しないのか」という疑惑が根底にありました。そこで、マスコミ業界に従事していた私に会って、そういった疑問を投げつけたかったのではないかと勝手に想像しました。

コロナワクチンは危険?

 Hさんは医療不信の懐疑派ですから、ワクチンは一度も打たず、周囲にも「ワクチンは危険だから絶対に打ってはいけませんよ」と奨めていました。「同窓会の会長だったFさんには、ワクチンを打たないようにあれほど言っていたのに、打ってしまったら、もう口がきけないほど体調が急変して寝たきり状態になってしまった」「俳優の西田敏行さんが急死したのは、(ワクチンの)レプリコンを打ったからですよ」

 まるでカルト集団に洗脳されたような発言が相次ぎましたが、Hさんの名誉のために弁明しますと、彼女は特定の集団に属しているわけではなく、全て個人的に一人で調査してでの発言でした。彼女は以前、リスクヘッジの会社に勤務していたので、その手の「調査」はお手の物です。果敢にも厚労省や内閣府に電話して、情報収集もしているようです。頭脳明晰で大変優秀な人で、夜も寝ないで全てボランティアでやっているというのです。自分の生活よりも他者の生命の方を第一に考える人でした。

ネット情報の危うさ

 ただし、情報源の主なものは、ネット記事やYouTubeなどのSNSです。日本では報道されていない英語やフランス語で発信された記事などです。既存のメディアに属していた私から見ると、正直、そこに危うさを感じてしまいました。確かにネット上には「正しい」情報もありますが、ネットは悪意に満ちた一方的なフェイクニュースが多いからです。取捨選択は個人の自由ですが、人間というものは自分の見たいものしか見ないし、信じたいものしか信じないものです。古代ローマのカエサルも「人間、誰でも現実のすべてが見えているわけではない。 多くの人は見たいと欲する現実しか見ない」と言っているぐらいですからね。

 つまり、「マスコミが報道しないことこそが真実だ」という思い込みに発展するわけです。その典型的な例が先の兵庫県知事選挙です。公職選挙法違反と名誉棄損ギリギリの戦法で、マスコミが報道しない間隙をぬって、YouTube等で「斎藤前知事は『おねだり』など一度もしたことはない。既存マスコミによる悪意に満ちたデマだ」とか「斎藤前知事は、公約の99.8%を実行した」(実際は99.8%の公約を着手しただけ)「高額な建設費が掛かる県庁舎を再建築しようとする既得権益者をぶっ壊せ」などと拡散させて、有権者に「斎藤さんは悪くはない」との同情票も買い、斎藤氏の再選に繋げました。

性善説に基づいた常識が通用しなくなった

 私に言わせれば、これまでの性善説に基づいた常識が通用しなくなった、ということです。先の都知事選では選挙公示の掲示板を開放してキャバクラ嬢の宣伝ポスターを貼らせる輩も出現しました。この兵庫県知事選では立候補しておきながら、「自分ではなく斎藤前知事に投票するように」と喧伝した人も出現しました。彼は自分の戦略によって、「民意」が反映されたので万々歳でしょう。今後もあらゆる手段を使ってこれまでの常識を覆していくはずです。選挙資金は、SNSの広告視聴回数から賄いますから、既存マスコミなど相手にしなくて済むわけです。

 ここまでいくと、衆愚政治化した民主主義政治そのものを疑うべきかもしれませんが、熟考すれば、選挙権もない独裁政治よりもマシだと言わざるを得ません。チャーチルが言ったように「民主政治は最悪の政治形態といわれてきた。他に試みられたあらゆる形態を除けば」ということになります。

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