インプ稼ぎとは?海外からも日本語で偽情報拡散

3月25日付読売新聞朝刊 雑感
3月25日付読売新聞朝刊

 昨日、この《渓流斎日乗》に書いた「『この危機―100年間業界リーダーだった朝日が克服できるか』=第56回諜報研究会」という記事の中で、ネット投稿では、どんな軽薄な記事でもページヴュー(pv)さえ稼げれば広告収益が上がるので、「pvだけが全てとなると、自分で取材せず、写真も撮らず、面白おかしくSNSの投稿などを勝手にまとめた、しかも普通の素人のサラリーマンでも簡単に早く出来る信憑性の薄い記事だけが持て囃されることになります。」と私は書きました。

 そしたら、本日3月25日付の読売新聞朝刊一面トップで、まさに時宜にかなった話題を掲載していました。題して「『能登』偽動画 カネ目当て 途上国から投稿 閲覧急増」です。この企画記事は社会面にも展開され、「『X』あふれる無意味投稿 インプ稼ぎ 被災者『悲しい』」という見出しが付けられています。この中で「インプ稼ぎ」というのは、私も初めて知りましたが、インプレッション稼ぎのことで、インプレッションとは「閲覧数」のことだといいます。

「お金儲けがしたい」

 このインプ稼ぎが国際的な「犯罪」になっており、「従来の法規制やルール、倫理観では健全性が確保できなくなったデジタル空間の現実を取材し、その対策を探る」というのが、この記事の出発点です。正確にはまだ刑法がないので、辛うじて「犯罪」にはなりませんが、倫理的、道義的にも問題だと読売の記者は提起しているわけです。能登半島地震では、SNS上に投稿された偽情報の多くが海外10カ国以上から発信されていたことを突き止めた記者は、パキスタンの地方都市サルゴダにまで出掛け、偽情報を投稿したパキスタン人に直接取材していました。その彼は、機械翻訳を駆使して能登地震に関わる投稿を始め、すぐに360万回もの閲覧数を得て、X(旧ツイッター)からお金を得て、2011年の東日本大震災の濁流の動画までも能登地震として拡散させていたといいます。そのパキスタン人は記者からの追及に対して「そんなことは知らない。インプレッションが欲しかっただけだ」と開き直り、「日本に申し訳ないことをしたと思うが、これからも投稿を続け、お金を儲けたい」と言ったといいます。

 これが「インプ稼ぎ」の実体だったんですね。日本だけでなく、海外から機械翻訳を使って日本人に成りすまして、閲覧数を得てお金を稼ぐ。特に途上国の人で、生活費を稼ぐために必死に偽情報や動画をつぎはぎして拡散していたとは、全く想像もつきませんでした。

著作権違反

 ネットにはもう国境はありませんし、機械翻訳や生成AIなどを使えば言語の壁も超えられます。しかし、このようなインプ稼ぎに限って、写真や動画の著作権は無視して違法に使用し、文章も盗作し放題です。そんな違法者にお金を支払うシステムも、お金を振り込むX(旧ツイッター)を始めとした大手IT企業も間違っているし、おかしいのではないでしょうか?

 海外から発信された能登地震の偽情報を閲覧した多くが日本人だったといいますから、現実は、私の想像を遥かに越えていたのでかなりショックでした。とはいえ、違法者にお金を支払うシステムは絶対におかしい。私は声を大にして言いたい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました