帝国軍人将校の戦後の身の処し方

有馬哲夫著『大本営参謀は戦後何と戦ったのか」(新潮新書、2010年12月20日初版) 歴史
有馬哲夫著『大本営参謀は戦後何と戦ったのか」(新潮新書、2010年12月20日初版)

 8月にNHKで放送された「昭和の選択 敗戦国日本の決断 マッカーサー『直接軍政』の危機」の中で、「緑十字機」の話が登場していました。日本がポツダム宣言を受諾した終戦直後の8月19日、米軍の命令により、参謀次長河辺虎四郎中将を代表とする日本の降伏全権団が、千葉県の木更津海軍飛行場から緑十字機に乗って沖縄県の伊江島に向かい、そこから米軍の飛行機に乗り換えて、フィリピンのマニラに行き、そこで降伏要求文書や連合軍による進駐の詳細などを受領して帰国します。

 私は不勉強ですから、この緑十字機の話は全く知りませんでした(帰国途中に静岡県磐田市の不時着するなど他にも話がいっぱいあります)。降伏全権団の代表が河辺虎四郎だったことも知りませんでした。私が知る河辺虎四郎といえば、戦後になってGHQ側に寝返って協力した悪名高い将軍ということぐらいでしたから、いやはや、もっと勉強せなあかん、と思った次第です(私は関西人ではありませんけど)

 そこで何か、参考になる書籍がないかと探したところ、見つかったのが有馬哲夫著「大本営参謀は戦後何と戦ったのか」(新潮新書、2010年12月20日初版)でした。もう14年も前に出版された本ですから、「何を今さら」と言われそうですが、この本は、2005年に米国立公文書館が公開した機密資料を基によくまとまった良書だと思いました。戦後1946年の「河辺機関」の創設、48年の有末精三元陸軍中将による秘密機関設立、服部卓四郎による国防軍創設計画、そして、米軍指令下、第三師団長だった辰巳栄一陸軍中将を軍事顧問に迎えた吉田茂首相による警察予備隊(後の自衛隊)創設といった一連の流れがよく分かりました。

 また、この中で、河辺も服部も有末も、そして悪名高い辻政信も、米軍に全面的に協力したというわけではなく、面従腹背で米軍を利用しようとしていたことをこの本で知りました。

 かなりの力作でしたので、同じ著者の他の著書も全部読んでみようかと思いましたが、SNS上でこの著者がエキセントリックな発言を繰り返しているのを見てしまい、正直、大丈夫かな、と思ってしまいました。

 そこで、私淑する学者先生の方々に学界における評判などを個人的に伺ってみました。このブログでは詳細は書けませんが、その御評価を読んで、「この1冊で十分かな」と思った次第です。

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