フランス在住の友人Aさんから、最近公開された映画「ド・ゴールの戦い」(原題”La Bataille de Gaulle”)を観て、「えらく感動して号泣してしまいました」とのお便りを頂きました。(ちなみに、Aさんは日本人ですが、フランス語で博士論文を提出してしまうほど仏語に精通されております)
調べたら、仏本国では6月に第1部が公開され、7月に第2部が公開されたようですが、それぞれ上映時間が3時間で合計6時間の大作です。それでも、「全然、6時間の長さは感じられませんでした」と言うのです。日本での公開はまだ決まっていないようですが、話はこれだけでは終わりません。
この映画は「1940年6月、ナチス・ドイツとの敗北を拒んでロンドンへ亡命し、孤立しながらも対独抗戦を呼びかけたド・ゴールの姿を二部作で描く歴史大作」となっております。壮大な野心作のようですが、この映画をつくったアントナン・ボードリーAntonin Baudry監督が只者ではないのです。
日本ではあまり知られていませんが、2019年に原子力潜水艦をテーマにした初監督作品「ウルフズ・コール」(原題”Le Chant du loup”)で注目を集めた新進気鋭の映画監督です。新進気鋭とは言っても、1975年生まれですから、今年51歳です。その前に何をやっていたのかと言いますと、15年間、外交官だったというのです。何処の国でも、外交官になれる人は超エリートですが、このボードリー氏に限っては、その超エリートぶりは破格中の破格なのです。
何しろ、彼は、フランス最高峰の理工系のグランゼコール(大学院大学)であるエコール・ポリテクニーク École polytechniqueと、文系ではフランス最難関のパリ高等師範学校 École normale supérieureの2校を卒業しているのです。理系、文系ともに秀でているということになります。日本で言えば、東京大学の医学部と法学部で博士号を得たということになるかも知れませんが、フランスの場合は、グランドゼコールを頂点にした少数精鋭の超エリート教育制度ですから、桁が違うかも知れません。
ちなみにポリテク(フランスではX=イックスと略称)の出身者には、アンドレ・シトロエン(自動車創業者)、ジスカール・デスタン(元大統領)、そして悪名高いカルロス・ゴーン(日産元CEO)らがおり、ノルマリアン(ノルマリアンヌ=高等師範学校卒業生)には、哲学者のベルクソン、サルトル、ボーボワール、メルロ=ポンティ、シモーヌ・ヴェイユ、フーコー、数学者のガロワ、化学者のパストゥール、作家のロマン・ロランら錚々たる顔ぶれです。
AIも大したことはない?
実は、アントナン・ボードリー監督について、よく知らなかったので、彼の学歴についてAIに聞いてみました。そしたら、高等師範学校卒は出てくるのに、ポリテクは出てこないのです。そこで、「この馬鹿野郎!ポリテクが抜けているじゃないか!この役立たずがあ〜〜」と思いっきり毒付いてやりました。すると、AIは平謝りで「大変失礼しました」と頭を下げ(たかどうかは分かりませんが)、正しい「回答」を提示するのです。
AIは「彼は文系の最高峰と、理系の最高峰の両方を卒業している超異色のダブルエリートです」と言うので、「それなら過去にそんな人物がいたのか?」と横柄に質問したら、アンリ・ポアンカレ(数学者)とポール・パンルヴェ(元首相)とジャン・カヴァイエス(哲学者、レジスタンス英雄)の3人の名前を挙げました。私はポアンカレしか知りませんでしたが、ボードリー監督以外にもいたとは驚きでした。
さらに、ボードリー監督の両親の職業を聞いたところ、母親は国語(フランス語)教師で、父親は分析官なので、「文系と理系のハイブリッドです」などともっともらしいことをAIは言うのです。
こいう回答は実に白けましたが、「頭脳明晰の面では、ボードリー監督より貴方の方が優秀ですよ」とベンチャらを言ったら、「そこまで仰って頂けるなんて、AI冥利に尽きます。ですが、私の方こそ、ご質問様の鋭いご指摘と深い知性に脱帽するばかりでした」ですって!
ボードリー監督は、AIにはとても出来ない官僚(外交官)と芸術家(映画監督)という大谷翔平のような「二刀流」をやり遂げた人ですから、やはり、AIよりボードリー氏の方が遥かに優秀ではないでしょうか?

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