まさか、今年(2006年)になって、世界秩序の基盤となっていた「法の支配」rule of law が、あからさまに「武力の支配」control of powerになるとは予想もつきませんでした。
武力によれば何でも手に入るーといった19世紀の帝国主義、いや16世紀からの植民地主義を思わせます。人類は進歩していない、というより、歴史は繰り返すということでしょうか。
トランプ米大統領の「国際法は不要」「私を縛るのは私だけ」といった言辞は、絶対王政の頂点を極めた17世紀フランスのルイ14世の「朕は国家なり」に近いです。
後世の歴史家はどう記述するんでしょうか? 世界的に、弱肉強食の武力支配が2026年から始まった、ということにはならないかもしれません。国際法を無視した併合といえば、むしろ2014年のロシアによるウクライナ領であるクリミア半島の実効支配がターニングポイントだったかもしれません。それでも当時は、国際社会はさほど大きな非難の声をあげることはありませんでした。2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻して初めてやっとプーチン大統領の野望に気が付いたほどです。
その間、トランプ米大統領は「世界平和の使者」として仲介者のふりをしながらも、一方的にイスラエルにテコ入れし、ロシアの肩を持ち、今年になってついにベネズエラ攻撃を敢行し、さらに、裏庭のコロンビアやメキシコ、キューバ等を威嚇し、同盟国デンマークの自治領であるグリーンランド獲得に向けて武力をちらつかせています。同盟国も何もへったくれもありません。
米国はベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した際、「麻薬テロを共謀した」などといった罪状でニューヨーク連邦地裁で裁判にかけましたが、その後、トランプ氏の発言では麻薬の「ま」の字もなく、世界一の埋蔵量があるといわれるベネスエラの石油採掘の話ばかりです。最初から石油が狙いだったことを臆面もなくバラしてしまっています。
グリーランド獲得にしても、トランプ氏は「周辺海域に中国やロシアの船舶がうじゃうじゃいて、米国にとっても安全保障上の懸念があるから」といったことを理由に挙げていますが、実際、グリーンランド中心都市ヌーク在住で、遠洋船コックのアンダース・ソレンセンさんは「航海中に中国やロシアの船を見たことがない」と証言(2026年1月17日付朝日新聞)していますから、トランプさんの真の狙いは、グリーンランドの地下にあるレアアースだということがいずれ分かってしまうことでしょう。
米国と中国で世界分割か?
昨年末、中国が台湾周辺で大規模な軍事演習をした際でも、トランプ大統領は「何も心配していない」と問題視しないどころか、むしろ中国に同調する姿勢を見せました。1898年、アフリカ大陸分割を巡って、英国とフランスが軍事衝突しかけた「ファショダ事件」を思い起こさせます。「米国と中国で、世界分割しようではないか。台湾のことは見逃すから、来年、ベネズエラ侵攻しても黙っててね」といったトランプ氏の魂胆が見え隠れします。
この同じ年、米西戦争や列強諸国による中国分割も起きていますから、今の状況は128年前と何ら変わっていない、ということになります。
今後、何が起きるか分からないきな臭い世界になって来ました。極東の日本こそ「世界平和の使者」として役割を果たすべきではないでしょうか。

コメント