悩む前に跳べ 帚木蓬生著「老活の愉しみ」を読んで

帚木蓬生著「老活の愉しみ」(朝日新書)keiryusai.net 書評
帚木蓬生著「老活の愉しみ」(朝日新書)keiryusai.net

 ここ数年、どうもド忘れがひどく、物覚えも良くないと思ったら、ヒトの脳細胞は、毎日10万個も死滅しているそうですね。帚木蓬生著「老活の愉しみ」(朝日新書)で教えられました。

脳細胞は100年経っても100億個ある!

 このままでは絶望的なのですが、著者はしっかりとフォローしてくれます。「ヒトの脳細胞は140億個あるので、1日に10万個死滅したとしても、1年で3650万個、10年で3億6500万個、100年で36億5000万個しか減らず、まだ100億個も残っているのです」と励ましてくれるのです。

 この本は老境に入った人にお勧めですが、若い人が読んでも為になると思います。高齢になってもスクワットなど筋力トレーニングを欠かさないこと、健康のために「まごはやさしいよ」(豆、胡麻、わかめ、野菜、魚、椎茸、芋、ヨーグルト)といった食べ物を摂ること、酒やタバコを控えることーといったよくある一般向けの健康本の極意も書かれているからです。

悩むから不健康に?

 私は遺伝的にメンタル面が弱いので、著者が勧める「森田療法」など精神療法が非常に参考になりました。ご存知の通り、著者は精神科医と作家の二足の草鞋を履いております。一番印象的なことは「ヒト以外の動物は5分間も悩みません。だから、動物は精神的には人間よりも健康なのです」という著者の言葉です。

 「そうだったのかあ」と納得しました。

 ヒトの脳は他の動物と比べて前頭葉が異常に発達しているので悩んだり、心配したりするようです。しかし、悩み続けると他の認識や知覚に悪影響を与えて、不健康になってしまうというのです。

 著者によると、近代以降の精神史は知性化一辺倒で、知的なものを重視し、身体的なものをおざなりにしてきたといいます。それゆえ、精神や心の問題を拡大して扱う傾向が増え、身体の大切さを置いてきぼりにしてきたというのです。

 確かにそうですね。

森田療法

 そこで、著者は森田療法を取り上げ、まず、精神や心の問題をいったん棚上げにして、身体に働きかけて、間接的に精神と心を整えるよう勧めます。それによって、知性を肥大化させてあれこれと悩む病態には効果があるというのです。

 この箇所を読んだ時、開眼しましたね(笑)。あれこれ悩む前に、考えることを捨てて、まずは手足を動かし、掃除でも洗濯でもいいですから、行動することを始めたら、何とか無間地獄のような悪循環から逃れられるのではないか、と思ったのです。

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