12月8日は真珠湾攻撃とジョン・レノン暗殺の日

青木冨貴子著「ジョン・レノン 運命をたどる」(講談社) 雑感
青木冨貴子著「ジョン・レノン 運命をたどる」(講談社)

 本日12月8日は真珠湾攻撃、日米開戦の日。昭和16年ですから、あれから84年です。今年2025年は「戦後80年」ですから、感慨深いものがあります。

勝てるわけがない無謀な戦争

 1941年当時、日本と米国との国力の差を比較すると、米国の国民総生産(GNP)は、日本の10〜12倍、石油生産量の700倍、鉄鋼生産は9倍だったという数字が、AIに聞くと今や簡単に出てきます。最初から負ける、と分かっていながら無謀な戦争を始めた当時の頭脳明晰なエリート為政者たちの責任は重いし大きいです。特に、軍幹部たちは大本営などの安全地帯にいて、赤紙1枚で徴兵した一兵卒らに対しては「決して捕虜になるな」と命令し(戦陣訓)、武器や弾薬や食糧も送らず、もしくは、送ることが出来ず、精神論のみで戦わせて、挙げ句の果てには玉砕を命じ、戦後もぬくぬくと生き延びた者もいます。

 思えば、戦前戦中は、公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の華族制度(身分社会)は健在で、江戸時代とそう大して変わりがありません。女性参政権はなく、人権思想という考え方はあっても、実社会では通じず、軍隊では鉄拳制裁が日常茶飯事でした。帝国陸軍に志願した亡父も「戦友がゲートルを無くしただけでも、連帯責任で全員が殴られた」と証言しておりました。一兵卒とは奴隷階級みたいなものだったのです。

 国(厚生労働省)は、アジア・太平洋戦争での戦没者は310万人だった、と公式に発表しておりますが、先月の11月、国立社会保障・人口問題研究所の研究員の調査で戦争による死亡者は376万人だったと推計しております。(11月7日付朝日新聞

いち早くジョンの暗殺を知る

 同じ12月8日、一緒にしては違和感があるかもしれませんが、ジョン・レノンが暗殺された日です(ニューヨーク時間では12月7日)。1980年ですからもう45年の歳月が流れてしまいました。ということは、今では50歳以上の人でないと当時を覚えていないことでしょう。もう歴史になってしまいましたね。

 私は当時、時事通信社という報道機関に入ったばかりで、1年目は見習いで、配属先だけではなく、当日は、整理部という全国、全世界から入ってくるニュース記事を編集校正する部署で修行しておりました。先輩記者の仕事ぶりを見たり、デスク補助をしたりしていたのです。はっきり覚えていませんが、12月8日午後2時過ぎぐらいに、ニューヨーク支局から「ジョン・レノン氏 撃たれる」とのフラッシュ(速報)が入電してきたのです。恐らく、世間一般の人よりいち早く、このニュースに接した一人だと思います。

 私は自他ともに認めるビートルズ・フリークですから、その衝撃は例えようもありません。特に、ジョン・レノンの熱烈なファン(全てのレコードを購入していましたが、最新アルバム「ダブル・ファンタジー」が発売されたばかりでした)でしたから、プロレスの脳天逆落としの技を喰らったような衝撃でした。その日の夜は前後不覚になるほど呑んで、翌日は、キオスクの売店で一般紙、スポーツ紙、英字紙など販売されている全ての新聞を購入し、「ジョン・レノン暗殺」の記事をスクラップしました。今でも、それは自宅のどこかにあると思います。

青木冨貴子著「ジョン・レノン 運命をたどる」は執念の力作

 恐らく、この「ジョン・レノン暗殺45年」のタイムリーな企画を狙って、今月12月1日に青木冨貴子著「ジョン・レノン 運命をたどる」(講談社)=写真=が発売されました。私も早速購入しましたが、忙しくてまだ全部読んでおりません。というか、あまりにも面白過ぎて、読むのが勿体なくてしょうがないのです。

 これはかなりの傑作です。青木さんは、音楽記者からノンフィクション作家(「ライカでグッドバイ カメラマン沢田教一が撃たれた日」など)になった有名人ですが、別に特権があるわけではありません。ジョン・レノンを暗殺して殺人罪で起訴されたマーク・チャップマン受刑者に何度も何度も手紙を書いて断られ、チャップマンのハワイ日系人の妻グローリア洋子にも何度も何度もコンタクトを取って断られながらも、やっと許諾を得て、一緒にチャップマン受刑者と面会したりしています。

 途中で身の危険を感じて、何年間も取材を中断した期間もありましたが、40年以上掛けて取材と執筆に費やした力作です。私はビートルズ、特にジョン・レノン・フリークで、彼の何十冊もの関連本を読んだりしてますから、この本に中に出て来るジョンの「人となり」に関して未知なことは少ないのですが、それでも著者の青木さんは本当によく調べています。特に彼女しか書けないこともあります。彼女の夫でニューヨーク・ポスト紙のコラムニストも務めた作家の故ピート・ハミルさんが若き頃、酔ったジョン・レノンと殴り合いの喧嘩になりそうになった逸話などです。

 ジョン・レノンのルーツはアイルランドで、イングランドに「征服」されたアイルランド人の悲哀や、歯に衣着せぬ物言いや皮肉屋の面がジョンにもよく現れているといった著者の分析もなるほどな、と思わせます。この本に関しては、またいつか取り上げます。

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