私が会社員だった頃、バスと電車を使って片道1時間半も掛かって都心の銀座まで毎日、通勤したものでした。電車もバスも超満員でほとんど立ちっぱなしです。周囲を見れば、10代から60代ぐらいまでの学生さんか、いわゆる働き盛りの世代ばかりで、元気溌剌といった感じでした。
でも、通勤がなくなり、日中に駅近くに行ったりすると、これまで見てきた世界が一変しました。言葉が悪いですが、「老人天国」です。日本が少子超高齢社会だということがよく分かりました。歩いている人は高齢者ばかりです。中には脚が悪そうで、びっこを引きながら歩いている人、中には、疲れたのか、柱に掴まって、立って休んでいる人もいます。買い物なのか、散歩なのか分かりませんが、ほとんどの男性の高齢者は、放心したように口を開けて歩いています。
しかしながら、外出出来るだけでも、まだ良い方なのでしょう。具合が悪くて自宅で寝たきりの人も多くいるはずですから。
ガラが悪い土地柄
私がこの街に住んで、あっという間に30年以上経ちましたが、いまだに愛着も郷愁も感じません。東京に通勤していたので、1日の大半は東京で過ごし、寝るだけの「ベッドタウン」みたいなものでしたから愛着が湧くわけがありません。
何と言ってもガラが悪い土地柄で、酔っ払いにからまれたり、バス停で待っているとわざとぶつかって来る猛者がいたり、競技用自転車に乗ってきた男に因縁をつけられたこともありました。とにかく大嫌いな土地なのですが、バブルの時は、都内も横浜も、あまりにもマンションが高額でここしか購入できなかったのでした。その後、バブルが崩壊して半額でも売却出来ず、引っ越しする機会を逃してしまいました。
良い点だけを見つける
しかし、余命を感じると、もう諦めざるを得ないかもしれません。何とか折り合いを付けて、この土地に住むしかないのか、と良い点だけを見つけるようにしました。
そしたら、昨日の夕方、家の近くを散歩していたら、見知らぬ高齢の男性から、すれ違いざま「こんにちは」と挨拶されました。しかも、1人ではなく、2人もです。勿論、こちらも「あ、こんにちは。暑いですね」と挨拶し返しました。全く知らない人なのですが、何か、自分自身も気分が良くなりました。
大嫌いな土地なので、憎めばキリがありませんが、こうして、ちょっとした「良い事」があったりすると、これまで凝り固まった偏見が少しずつ緩和するような気分になりました。
世界は、自分が思っているほど悪くはないのかもしれませんね。
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