伊東市長の「学歴問題」は氷山の一角か?市民を巻き込む政治対立と図書館計画の行方

伊東市の田久保真紀市長 Wikimedia Commons 雑感
伊東市の田久保真紀市長 Wikimedia Commons

 小さな地方の自治体の市長の「学歴詐称」疑惑の話なのに、テレビのワイドショーが毎日のように追い掛けて報道するので、すっかり全国的に有名になってしまいました。

小池都知事の方が問題なのでは?

 静岡県伊東市の田久保真紀市長のことです。今年5月の市長選で、「東洋大卒」と申告して初当選しましたが、実は「東洋大学除籍」だったという疑惑です。私は、何でこんなに騒ぐのか不思議です。東京都の小池百合子知事なんか、「カイロ大学首席卒業」が学歴詐称ではないか、とかなり物議を醸しました。私も、綿密な取材で知られるノンフィクション作家の石井妙子さんが書いた「女帝 小池百合子」(文藝春秋、2020年5月初版)を読んで、「これは絶対に学歴詐称だ」と確信しました。

 しかし、皮肉を込めて「賢明なる」都民の皆さんは昨年6月の都知事選で小池氏に290万票以上投じて、3選を許したじゃありませんか。私が知っているYさんなんか、堂々と「小池で良い。学歴なんかどうでもいいじゃないか」と開き直っていたので、唖然、呆然としましたが、この程度の都民にはこの程度の都知事で良いということなのでしょう。何と言っても、民主主義ですから。

下克上当選だった田久保氏

 翻って、今話題の伊東市長です。7月31日に田久保市長は「続投」宣言したお蔭で「市長、辞めろ」のリコール運動が一段と高まりました。でも、報道を見聞するだけでは、その背景や事情が分かりません。「裏で何かあるはずだ」と思い、たまたま、良く知っている元会社の後輩記者がこの問題を取材していたので、彼に聞いてみました。

  そもそも、伊東市長選での田久保市長の当選は、「下克上当選」だったというのです。自、公両党や連合静岡、観光や建設など約70の組織・団体の推薦を得て盤石の構えで3期目を目指した前市長に対して、市議2期目の田久保氏が挑戦状を叩きつける形になったというのです。

 田久保氏の初当選は、市北部を地盤とする自民党県議出身の市長が2代20年間続いたことから、刷新を求めて、市南部の伊豆高原地域の支持が多い田久保氏に託したのではないかという選挙分析もあります。

リークは誰なのか?

 選挙で争点となったのが「新図書館建設計画」でした。田久保氏は、2027年度まで設定していた継続費42億円強の全額削除と工事入札中止を訴えて当選したというのです。これが、数年かけて積み上げた図書館計画をいきなり反故にされた議会側との対立を生んだわけです。田久保氏の学歴詐称疑惑は、同氏追い落としを図る議会側の誰かのリークによるものと推察されます。

出直し選挙しかない?

 伊東市といえば、ハトヤホテルが有名で、もともと熱海市と並ぶ温泉観光都市でしたが、このところ、訪日客増大などで脚光を浴びる熱海に比べ、伊東はこの波に乗れず、伊東駅周辺も半ばシャッター商店街化しているそうです。駅前の賑わいにつながりそうがない図書館計画が地元民のウケが悪かったということかもしれません。

 となると、今のような「続投」のような宙ぶらりんでは混乱を増すばかりです。これで、田久保氏も兵庫県知事のように、すっかり人間離れした「悪役」になってしまいましたが、いったん辞職して出直し選挙で民意を問うことしかないでしょう。

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