古代のイスラエルとイランは「友好的」だった?

鶴見太郎著「ユダヤ人の歴史」(中公新書) 書評
鶴見太郎著「ユダヤ人の歴史」(中公新書)

 ついに「中東戦争」が勃発してしまいました。トランプ政権の米国までもが国際法に違反して参戦して、イランの核施設3カ所を空爆しました(6月21日)。本日(6月24日)の最新ニュースでは、「イスラエルとイランが完全なる停戦合意に達した」(トランプ氏がSNSに投稿)ということですが、いまだ予断を許されません。

民族問題? 宗教問題?

 何故、こうも中東はきな臭く、戦禍が絶えないのでしょうか? しかも、紀元前の古代から紛争が続ています。民族の問題? 宗教対立の問題? 

 民族の問題に関しましては、先日の拙ブログに書いた通り、現在、敵対関係にあるユダヤ人とアラブ人は、もともとセム語族の異母兄弟でしたよね。もっとも、ロシアのプーチン大統領が先日、「ロシアとウクライナは同じ民族なので、ウクライナは全てロシアの領土だ」と発言したように、異母兄弟の間でも、戦争が起こりうるということなのでしょう。日本の戦国時代だって、親子、兄弟で家督争いしていたぐらいですから。

 次に、宗教問題に関しましては、また、先日の渓流斎ブログに書いた通り、意外にもユダヤ教とイスラム教は対立はせず、親和性があったのです。ユダヤ教もイスラム教も、「ユダヤ人とアラブ人はアブラハムを祖とする」との記述がある旧約聖書を聖典としていました。

ユダヤ人を解放したペルシャ

 そして、残るは、今のイスラエルとイランとの対立問題です。何故、これほどまでにこじれてしまったのか? 理解できないのは、もともと、古代の歴史を振り返ると、ユダヤ=イスラエルは、「バビロンの捕囚」(紀元前586年~紀元前538年)でディアスポラ(故郷を追われて世界に離散)になった後、(アケメネス朝)ペルシャ帝国=イランに支配されますが、ペルシャのキュロス2世は、ユダヤ人がカナンの地に戻り、神殿を再建することを許可するなど「ユダヤ人を解放」していたからです。

 恩義を感じたユダヤ人は、初期のユダヤ教の律法「ハラハー」では、異教徒への武器販売は禁じられていたというのに、「我々を守ってくれるのでペルシャ人には許容される」とバビロニア・タルムード(口伝律法)にまで書かれているのです。

ユダヤ人もゾロアスター教の影響

 ペルシャ帝国支配下で、ユダヤ人は、ペルシャ文化の影響を受け、「最後の審判」や「天国」、「死者の復活」といった概念は、ペルシャ人の信仰するゾロアスター教由来であると主張する学者もいます。ゾロアスター(ザラスシュトラ、紀元前7世紀~生没年不詳)とは、19世紀の哲学者ニーチェの主著「ツァラトゥストラはかく語り」と、この著書に触発されてリヒャルト・シュトラウスが作曲した同名の交響詩のツァラトゥストラ(ドイツ語読み)のことです。

 以上のほとんどが、鶴見太郎著「ユダヤ人の歴史」(中公新書)で教えられたことです。現代、争っているイスラエルとイランですが、古代のユダヤとペルシャは、意外にも「友好的」だったことをこの本で初めて知りました。だからこそ、両国は、何とか和平の道を歩めないものかと思いました。

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