真打昇進した四代目松柳亭鶴枝の秘密

東京・池袋演芸場 keiryusai.net 雑感
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  昨日は、久しぶりに落語を堪能致しました。私が住んでいるマンションで、水道の大工事があり、水道をタンク式から直結式に変更するのにほぼ1日断水するため、自宅にいるわけにはいかなかったのでした。

 長時間、時間をつぶすにはどうしたら良いのか? 大変失礼ながら、笑って心の健康にもなる寄席に行くことにしたのです。色々調べて、総合的判断で、結局、東京・池袋演芸場に行くことにしました。私の好きな「独演会では切符が取れない」春風亭一之輔の出番があったからです。(池袋演芸場は狭いので彼を間近に見ることが出来ましたが、意外と頭がデカい人だなあと思いました=失礼! 脳みそがいっぱい詰まっているということで

真打昇進披露興行

 池袋演芸場は、普段の木戸銭は3000円だったと思いましたが、「真打昇進披露興行」と銘打って3500円もしました(ただし、学生とシニアは500円引き)。私はかつて、落語担当の記者をしたことがあり、真打に昇進した若い噺家さんを取材したことがあります。そのうちの一人、お相撲さん出身で落語家になった三遊亭歌武蔵(57)がおりますが、今では多くの弟子を抱える大師匠になっています。彼が真打に昇進したのは1998年で、もう27年も昔のことですか…。年が経つのは早過ぎる。

 今年の落語協会で真打に昇進した噺家は5人いたそうですが、今回、トリを務める落語家は四代目松柳亭鶴枝(しょうりゅうてい・かくし)という人でした。不勉強で全く知りません。四代目というからには歴史のある名跡のようですが、松柳亭も聞いたことがありません。後で分かったのですが、彼は名人柳亭市馬の弟子でした。

尾藤イサオ与利の幟の旗

 池袋演芸場には開場の30分以上前に着いてしまいました。そしたら、もう既に長い行列で20人ぐらい並んでいました。「えっ?松柳亭鶴枝ってそんな凄いの?」と半信半疑で結局並ぶことにしました。入口近くには「四代目松柳亭鶴枝」の幟の旗が立てかけられ、よく見たら、その旗には「尾藤イサオ 与利」と書かれていました。

 尾藤イサオ? 往年のロカビリー歌手じゃありませんか。リージェントに黒皮ジャンパーがトレードマークでしたが、もしご健在なら80歳は過ぎておられるのでは? 尾藤イサオの全盛期を知っているファンは、今や還暦、いや75歳を過ぎた高齢者じゃないかなあ、と思いながら入場しました。

落語家の息子がロカビリー歌手

 そしたら、春風亭一之輔や柳家小さん、柳亭市馬らによる「真打昇進披露口上」で分かったことですが、尾藤イサオの実父は落語家で、三代目松柳亭鶴枝だというのです。これには吃驚しましたね。落語家の息子がロカビリー歌手になるケースは、山下敬二郎の実父が柳家金語楼だという例もありますから、それほど驚くべき話ではないかもしれませんが、知りませんでしたね。

 松柳亭鶴枝の初代と二代目は江戸時代に活躍した噺家で、尾藤イサオの実父である三代目も主に戦前に活躍したので、四代目の名跡を継ぐのは78年ぶりだそうです。断絶していた名跡を復活させたということです。現在81歳で現役の歌手活動を続けている尾藤イサオさんも大喜びで、幟の旗を寄贈したということなのでしょう。

古典を継承する正統派

 さて、大トリを務めた四代目松柳亭鶴枝は、1991年、札幌生まれの33歳。披露口上の席では、緊張のせいか、ニコリともせず、エンターテイナーらしからぬ振る舞いで大丈夫かな? と思わせましたが、古典の名作「蒟蒻問答」を30分近く、落ち着いて見事演じ切りました。要するに、春風亭昇太や桂宮治とは全く違うタイプで、口数も少なく、実に生真面目で、あまり「枕(まくら)」さえも披露せず、ニヤニヤしない古典を重んじる正統派だとお見受けしました。あまりテレビに出てきてチャラチャラするようなタイプにも見えませんが、もしかしたら、今後、落語界を背負う大御所になるかもしれません。

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