「未知の独裁国家」トルクメニスタン

トルクメニスタンの首都アシガバート(Wikimedia Commons) 雑感
トルクメニスタンの首都アシガバート(Wikimedia Commons)

  先日、NHKBSで放送された世界のドキュメンタリー「トルクメニスタン 未知の独裁国家を行く」は、実に興味深い番組でした。2024年、フランスのNova production制作です。仏人のジャーナリストが、観光客を装って入国し、トルクメニスタンという国の現状を隠し撮りしていました。そこはロシアや中国と違い、北朝鮮とも少し違う「未知の独裁国家」の実態が炙り出されていました。世界第4位の天然ガスの埋蔵量を誇るトルクメニスタンは、その有り余る財力を一人の独裁者が意のままに使い、首都アシガバートは、広大な道路に白亜の豪華な大理石建築で埋め尽くされているものの、街中に人影はなく、まるでゴーストタウンでした。首都を走る自動車は全て白色かグレーに決められていて、赤や青の車体は首都に入ることができません。

 観光客にピタリと付いたガイドはまさに国家の監視員で、独裁者に都合のよい場所しか案内しません。多くは撮影禁止です。独裁者はスポーツ万能で射撃の名人で百発百中。騎馬民族の末裔らしく誇らしく名馬に跨ってみせます。音楽の才能もあり、国歌を作詞作曲するほどです。ここまでいけば、悲劇を超えて、まるで漫画のような喜劇の世界です。その一方で、一部の恩恵に預かっている特権階級とは違って、庶民は貧困に苦しみ、言論や表現の自由もなく、反体制活動への厳しい取り締まりで多くの市民が隣国トルコなどに逃れていました。

 2022年に息子セルダルに大統領職を譲位しましたが、今もトルクメニスタンの最高指導者は、グルバングル・ベルディムハメドフ前大統領(人民評議会議長)です。1957年6月29日生まれの67歳。早くも孫にも英才教育をしています。シリアのアサド政権は二代であっさり崩壊しましたが、三代続くとしたら、北朝鮮と同じです。北朝鮮以外で地球上にこういう国家があったとは、全く知らなかったので、番組を見て茫然自失となりました。

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