「アメリカを再び偉大な国へ」MAGAの深い意味

トランプ米大統領 Wikimedia 雑感
トランプ米大統領 Wikimedia

  風邪を引いて1週間も経つというのにまだ軽い咳が出ます。風邪が人から人にうつるウイルスだとしたら、恐らく、3月1日に久方ぶりに都心に出たので、その時に感染したと思われます。以前は都心に毎日通勤していたので、直ぐ免疫が出来て罹らなかったかもしれません。やはり、人が多い東京は怖ろしいなあ…。

 ところで、米国トランプ大統領のスローガンは、レーガンさんを真似したMAGA(アメリカを再び偉大な国へ)ですが、心を明鏡止水にして考えてみれば、もはや米国は偉大な国家ではないということの裏返しになるのではないかと思えて来てしまいます。そんな事実を証明するような興味深い番組が先日放送されて思わず見入ってしまいました。BS-TBS「報道1930」という番組(3月7日)です。

エマニュエル・トッド「西洋の敗北」

 番組では今、世界中で話題になっているフランス人のエマニュエル・トッド氏の「西洋の敗北」(文藝春秋)を取り上げて、識者が解説しておりました。ですから、以下に出てくる統計数字は、この本から引用されたもので、これから私が書くことは、明らかに「孫引き」ということになります(この本は、日本語、ドイツ語など世界中で翻訳されていますが、何と英訳は出ていないそうです。余程、米国人に不都合な事が書かれているのかしら?)。

 この本には、現在の国際情勢の変化の背後に、米国の産業構造の変革があったということが書かれていました。米国では、自動車産業や鉄鋼業など基幹産業が衰退し、いわゆるモノづくりの製造業が衰えて、ITソフトや金融業にシフトしていったことは、私でも薄々感じてはいましたが、それが数字に如実に表れていたのです。

軍需産業人口が約3分の1に

 特に顕著だったのが、軍需産業です。冷戦真っ只中の1980年代に320万人の雇用を抱えていたというのに、現在ではその3分1近い110万人に減少したというのです。そのお蔭で、ロシアでは国内で、月産25万発の弾薬を製造出来る(2023年)というのに、米国では10万発しか製造できないというのです。軍需産業には高度な知識を持ったエンジニアが必要ですが、そんな技術者が国民に占める割合は米国が7.2%しかいないのに対して(2020年頃)、ロシアではその3倍以上の23.4%もいるというです。

 その背景には、米国ではSTEM(科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学)教育が重視されなくなり、優秀な学生は、より高額な年俸が稼げるビジネススクール(金融業)やロースクール(弁護士)などに「頭脳流出」してしまうことにあるというのです。

 冷戦が終結し、ベルリンの壁が崩れ、ソ連邦が崩壊し、和平が実現したお蔭で、米国の軍需産業人口が減少したことは素晴らしいことだった半面、21世紀になってプーチン・ロシアが本性を剥き出しするようになり、衰退した?米国に、強権主義のトランプ氏が「国民の総意」で再登場した図式が、これで説明できます。

 米国第一主義のトランプ氏が、株安やインフレなどのデメリットがあるのに高い関税を掛けるのは、米国内のモノづくり産業を復興したいという意向が見え、何ら矛盾した話ではないことが分かります。やり方が強行過ぎて世界を混乱の渦に巻き込んでいますが。

急増する無宗教派

 もう一つ、米国は、メイフラワー号に乗ったピルグリム・ファーザーズが建国したキリスト教徒(プロテスタント)の国、と歴史の教科書では習いますが、最近では米国人の宗教離れがとみに進んでいるというのです。2007年に「自分は無宗教だ」と答えていた人が全体の16%だったのに対して、23年には28%に上昇したというのです。プロテスタントは、マックス・ウエーバーを出すまでもなく、清貧でも真面目に勤勉に働いて貯蓄し、他者に施しを与える寛容な精神を持つイメージがありますが、そういった精神が薄れているということになります。

 しかも、米オクラホマ大学のサミュエル・ペリー教授は、キリスト教を利用して再登場したトランプ氏の影響で、「キリスト教=保守=共和党」のイメージが強くなり、特に、国民の半数近くを占める反トランプ派の民主党やリベラルや若者たちが宗教から離れていく傾向があると分析しておりました。

 やはり、毎日のニュースを追っていただけでは分からないことが沢山あります。こうして、統計や歴史や文化背景を読み解くことで、その補完をしてくれます。

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