国立西洋美術館「モネ 睡蓮のとき」展

国立西洋美術館「モネ 睡蓮のとき」(2024年10月5日~2025年2月11日) 雑感
国立西洋美術館「モネ 睡蓮のとき」(2024年10月5日~2025年2月11日)

 東京・上野の国立西洋美術館で開催中の「モネ 睡蓮のとき」展を観に行って参りました。私はフリーランスですから、「平日の午前中なら空いているだろう、こりゃ楽勝だわい」と楽観して出掛けたのですが、これが大間違い。何処からこんなに多くの人間がわいてくるのか、物凄い混雑で、最悪、人気の絵画の前には二重、三重のトグロを巻く程でした。まあ、私は背が高い方ですから、後ろからでもじっくり観ることが出来ましたが…。

 それに、モネも晩年になると、具象から抽象にすっかり描き方を激変させたので、近くで観ても何が何だか分かりません。遠くから観て初めて、「嗚呼、ジヴェルニーのモネの自宅にある日本庭園の太鼓橋かあ」と分かるわけです。(モネが晩年、具象から抽象に転換したのは、白内障を患ったためという説が有力です。)

国立西洋美術館「モネ 睡蓮のとき」(2024年10月5日~2025年2月11日)
国立西洋美術館「モネ 睡蓮のとき」(2024年10月5日~2025年2月11日)

 展覧会は来年2月11日まで開催されますので、いつ行っても良かったのですが、私は、このブログで何度も書いておりますが、大学の卒論のテーマが「印象派」で、勿論、クロード・モネ(1840~1926年)も取り上げたので、特にモネに関しては半世紀近い興味と関心があったからでした。当日券2300円のところ、事前に前売券を2100円で入手しておきました。今はもう展覧会は2000円以上しますんですよ。物価高に便乗しているんじゃないでしょうか。私が学生の頃は500円だったことを覚えています。石破首相におかれましては、庶民と年金暮らしの苦しみを少しは感じてほしいものです。 日本国憲法第25条も「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と謳っているではありませんか!

国立西洋美術館「モネ 睡蓮のとき」(2024年10月5日~2025年2月11日)
国立西洋美術館「モネ 睡蓮のとき」(2024年10月5日~2025年2月11日)

 話はあらぬ方向に飛んでしまいましたが、今回の「モネ 睡蓮のとき」は、主に、モネ晩年の睡蓮画に絞った企画展ですが、量質ともに世界レベルでした。料金2300円も、「まあ、しゃーないか」といった感じで、元手は取れると思います。外国人観光客も多く訪れていました。出展された作品の8割以上は、パリのマルモッタン・モネ美術館所蔵のものでした。私は、この美術館にモネの「印象」を観るために訪れたことがありますが、大変こじんまりとした美術館で、入場するのに20分ほど待たされましたが、館内はそれほど混んでいませんでした。モネの「印象」の前でも人だかりになることはなく、私が30分近く立ちすくんでも、大丈夫だったぐらいでしたから。

 「何で、日本はこんなに混雑するんだろう? しかも、平日の午前に!」とブツブツ独り言を呟きながらも、冷静になって周囲を見ましたら、観客の8割近くは女性でした。古い言葉で言えば、「有閑マダム」という区別用語が思い浮かびました。平日は、日本の男たちは「社畜」として働かされていますから、やはり有閑マダムの出番、ということなのでしょう。女性たちは、ますます教養を身に着け、充実した日々を送ることが出来ます。これで、将来の日本も安心だあ。

 私自身、モネを卒論に取り上げたこともあり、社会人になっても、世界中の美術館で結構モネの作品は観ております。モネは多くの作品を残しましたが、それでも、やはり、「睡蓮」は彼の代表作と言って良いでしょう。何度観ても素晴らしい、と感動しながら観ていたのですが、ふと、「何で、平面画なのに、モネが描く睡蓮は本当に池に浮かんでいるように見え、何で平面なのに立体的に見えるのだろう?」といった素朴な疑問が浮かんできました。

クロード・モネ「睡蓮」(1916年、国立西洋美術館蔵)
クロード・モネ「睡蓮」(1916年、国立西洋美術館蔵)松方コレクション

 その答えは見つかりませんでしたが、有り体に言えば、モネの天賦の才能によるもの、としか言いようがありません。

 「モネ 睡蓮のとき」展は、40分ほどで観終わったので、「常設展」を久しぶりに観ることにしました。展覧会ショップは大混雑で、行列をなしていたので、入場するのは諦めました。並ぶのは、時間の無駄ですから。それに、絵葉書やカタログにせよ、モノが欲しいとは思わなくなりました。

国立西洋美術館「常設展」 ロダン「化粧するヴィーナス」(1890年頃)、背後はルノワール「アルジェリア風のパリの女たち」(1872年)
国立西洋美術館「常設展」 ロダン「化粧するヴィーナス」(1890年頃)、背後はルノワール「アルジェリア風のパリの女たち」(1872年)

 国立西洋美術館の所蔵品は、ご案内の通り、薩摩の松方正義元首相の子息で川崎造船所(現川崎重工)社長を務めた松方幸次郎のコレクションが母体になっています。当時のお金持ちが現在と比べても桁違いだったことが分かります。美術品の資産価値は数千億円か何兆円もすることでしょう。松方コレクションは、先の大戦での日本の敗戦でフランスに戦利品として没収されましたが、日本政府が同コレクションを展示する美術館をつくるという条件で、作品が日本に返還されたといいます。

 だから、フランスの国宝級の作品でも日本にあり、こうして、日本人が容易に観ることが出来るのです。常設展は、企画展とは違い、比較的空いていて、じっくり観ることが出来ます。「隠れたオアシス」としてお勧め致します。

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