9月1日にドイツ東部2州で行われた州議会選で、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が、チューリンゲン州で第1党を獲得するなど大躍進したというニュースには驚かされました。何しろ、極右政党が州議会レベルで第1党となるのは第2次世界大戦後初めてだと言いますから、まさに歴史的転換です。7月にはフランスでも国民議会選挙で、実質上、マリーヌ・ルペンさん率いる極右政党「国民連合」が躍進しましたし、既にイタリアではメローニ首相、ハンガリーではオルバン首相と、極右派が政権の座に就いています。欧州はこの先、どうなってしまうのか?
AfDは、欧州債務危機を巡ってギリシャ支援に反対する人々によって2013年に結党され、反移民・難民、反イスラムに加え、ウクライナへの武器供与にも反対し、ロシア寄りの姿勢を掲げています。
忘れてはならないことは、ちょうど100年前の1924年、ナチスがドイツ国会の選挙で獲得した票は、わずか3%でしたが、その8年後の1932年の選挙では、他党を圧倒し、最大の33%の票を獲得しました。これによって、1933年1月、党首ヒトラーは首相に任命されましたが、ナチスは暴力革命によって政権の座に就いたのではなく、民主的選挙で選ばれたということです。つまり、ドイツ国民はナチスを選んだのです。(ただし、ナチ党は、ミュンヘン一揆や突撃隊の創設などもともと武力革命を目指していました。)
勿論、100年前の第1次大戦敗戦後の莫大な損害賠償による経済破綻と失業者増大、一部の金融資本家による不動産の買い占め等で溜まりに溜まった国民の不満という当時の時代背景と現代とは全く違いますが、今でも極右政党が支持を集める土壌がなくなってはいません。その現代の土壌とは、東西ドイツの経済格差、押し寄せる移民による経済損失感、機会均等の喪失などですが、何と言ってもロシアによるウクライナ侵攻が極右政党を大いに勇気づけました。
戦後80年近く経過し、変な言い方ですが、戦争タブーの箍(たが)が外れてしまったということなのでしょう。第2次大戦を体験した世代が少なくなり、戦争アレルギーの抗体が切れてしまったとも言えます。手っ取り早く武力で解決しようという政策です。
欧州だけではありません。最大のネックは超大国になった中国ではありますが、日本だって、2024年度の防衛関連予算の合計が8.9兆円にも急増し、国内総生産(GDP)比で1.6%になりましたからね。22年度までのGDP比1%未満の壁とタブーは見事破られました。
赤信号 皆が極右化すれば怖くない?
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