NHK「映像の世紀バタフライエフェクト」の「太平洋戦争 日米プロパガンダ戦」を見ました。
1941年12月8日の日米開戦以降、日本、米国、いずれもお互いに相手敵国の残虐性や野蛮性を強調して、戦意高揚を目的に作られたプロパガンダ放送を見せつけられました。
「太平洋戦争 日米プロパガンダ戦」
米軍は特に、ハリウッド映画のプロの監督を採用して極めて精巧な「作品」をつくるのに成功しています。日本人は「個」がなく、天皇を中心にいつも集団で行動し、何を考えているか分からず不気味(まるで今の北朝鮮みたいに)で、喜んで米軍の若い兵士を拷問したり、殺戮したりする野蛮で無謀な民族だという偏見を植え付けるのに見事成功しています。まさに、洗脳です。だから、広島、長崎への原爆投下を米国民の8割以上が支持していました。でも、日本人から見ると、ジャップ、ジャップと叫んで、やり方が陰湿ですね。ヤンキー(差別語ではありません)の明るさは何処へ行ったのやら?
一方の日本は、社団法人日本ニュース映画社によって大本営の嘘と偽情報を垂れ流しです。日本人は、子どもの頃からの教育で既に「洗脳」されていますから、今さら国民に戦意高揚する必要ありません(苦笑)。むしろ、対米謀略放送に力を入れて、敵国米軍の戦意を喪失させようとします。
謀略放送に詳しいインテリジェンス研究所特別研究員の名倉有一氏によると、陸軍参謀本部の恒石重嗣少佐(プロデューサー兼スポンサー)によって、「ゼロ・アワー」(ディレクター:満潮英雄、1943年3月開始、ガダルカナルなど南太平洋の米軍向け)と「日の丸アワー」(同:池田徳眞、同年12月開始、米本土対象)というラジオ放送が開始され、その代表的なアナウンサーが「東京ローズ」でした。東京ローズは、米軍側が付けた愛称です。英語に通じた若い女性で、実際には十数人もいて、日系二世の人が多かったようです。若い米軍兵士に対して、郷愁を誘うような甘い言葉で囁き、故郷に帰りたくなるような音楽をかけて、厭戦気分を助長するように仕組まれました。
「映像の世紀」では、東京ローズの一人である日系二世のアイバ・トグリ(戸栗)・ダキノ(1916~2006年)が登場していました。当時27~28歳。戦後は国家反逆罪として逮捕され、6年2カ月服役して模範囚として釈放された映像を流していましたが、今一つ、このアイバさんという人物像がよく分からない。「映像の世紀」の限界か? そこで、少し調べたところ、彼女の父親は山梨県出身で、ロサンゼルスで食料品店を営み、本人はUCLAの大学院で医学を学び、日本に住む叔母のお見舞いで来日したところ、開戦で米国に帰国できず。生活のために同盟通信社(現在の時事通信社、共同通信社、電通)の外国放送傍受とタイピストなどの仕事をする傍ら、日本放送協会の「ゼロ・アワー」の放送にも従事するようになったといいます。
ただ、本人は、米国に対する愛国精神から従事したようで、たびたびの特高からの勧告にも関わらず、米国籍を捨てなかったといいます。それなのに、祖国から国家反逆罪に処せられるとは、不幸でしたね。
この時代は、まさに不幸で狂気の時代でした。やはり、正直、勉強するだけで気分が落ち込んでしまいます。だから、多くの日本人は、この時代のことを知ろうとしないのでしょうか?
陸軍参謀本部 恒石重嗣少佐の年譜
なお、名倉氏の御厚意で、謀略放送をつくった陸軍部宣伝主任参謀の「恒石重嗣 年譜」のリンクを貼らさせて頂きました。
歴史的事実を多くの人に知ってもらいたいと思いました。
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