いつぞや、この渓流斎ブログで、今最も脂が乗り切っている有名な歴史家、磯田道史氏のことを「自己顕示欲の強い人」なぞと書いてしまいましたが、少し反省しなければならないかな、と思うようになりました。
上の記事で書いた通り、磯田氏が「自己顕示欲が強い人」だと書いたのは、テレビの歴史番組に多く露出したり、自著が原作になった映画にもエキストラとして出演されたりしていたからです。
「少し反省しなければならない」と書いたのは、彼が進行役として出演しているテレビ番組「英雄たちの選択」で、最近は「昭和の選択」として、1931年に国際裁判所(オランダ・ハーグ)の所長(裁判長)を務めた安達峰一郎(1869~1934年)や、敗戦直後にGHQによる「直接軍政」で統治する「三布告」を直前に撤回させた外交官鈴木九萬(ただかつ、1895~1987年)らこれまで歴史の教科書に載っていなかった偉人を取り上げ、番組の中で極めて誠実で堅実な反戦思想を展開していたからでした。
「見直した」と言えば、生意気な発言ですから、「もっともっと自己顕示欲を発揮して、世間にモノ申してください。応援します」と訂正します。自己顕示欲は稀に見る才能ですからね。彼の発言力とその影響力は絶大です。彼が言うことなら、多くの国民が耳を傾けることでしょう。私なんか、毎日、目立たないように、目立たないように、low profileして生きていますから(苦笑)。
磯田氏(1970~)は、江戸時代が専門です。子どもの頃から古墳好きで古代史にも詳しい歴史家として知られていますが、近現代史にも精通しているとは思いませんでした。いや、むしろ、この人は江戸時代より近現代史専門に転向してもらって、独自歴史観をもっともっと披瀝してもらいたいと思いました。現在、定期的に連載している読売新聞や産経新聞の思想信条と合わなくてもです。
日本史の最大のエポックメイキングは、「戦国時代」でも「幕末」でもなく、先のアジア・太平洋戦争での敗戦と史上初の占領期以外他にないからです。何しろ、日本が滅亡して他国によって7年間占領された史実を知らない若者が多すぎます。
ちなみに、鈴木九萬らが撤回させた「三布告」とは以下の通りです。
布告第一号 日本国の公用語を英語とする
布告第二号 日本の司法権はGHQに属する
布告第三号 日本円を廃しB円と呼ばれる軍票を日本国の通貨とすること
布告第二号は、直接軍政ということです。本土では一時期の千葉県館山市を除いて免れましたが、沖縄では1972年まで続きました。
布告第三号の軍票は、日本軍も一時期占領した中国やフィリピン等で発行して経験しましたが、膨大なインフレーションを巻き起こすことが分かっています。米軍は既に3億円分の軍票を準備していたといいますから、これらが発行されていたら日本経済は壊滅的打撃を受けていました。
恥を晒しますが、この「三布告」は、磯田氏の番組で私は初めて知りました。
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