杉田敏著「現代英語基礎語辞典」

杉田敏著「現代英語基礎語辞典」(集英社、2024年3月31日初版、2200円) 書評
杉田敏著「現代英語基礎語辞典」(集英社、2024年3月31日初版、2200円)

辞書を読む

 杉田敏著「現代英語基礎語辞典」(集英社、2024年3月31日初版、2200円)を読んでおります。辞典なので本来なら「引く」ものなのですが、私はこの辞典を読み物として読んでおります。

 著者の杉田氏は、ご説明するまでもありませんが、NHKラジオ「実践ビジネス英語」の講師として32年半、そして現在でも季刊の「杉田敏の現代ビジネス英語」(音声はアプリにダウンロード)で活躍されている英語教育者です。もともと、大学卒業後、日本の英字紙「朝日イブニング・ニューズ」の記者となり、渡米して修士号を取得して「シンシナティ・ポスト」紙の経済記者として活動し、その後はPR会社の社長などを歴任しました。「英語力」はとてつもない人です。私自身は、30年以上昔のラジオ放送からお世話になり、今でも「杉田敏の現代ビジネス英語」で勉強を続けています。当初は、内容がほとんどチンプンカンプンでしたが、長年聴き続けてやっと付いていけるといった程度です。今でも知らない単語や聞き慣れないイディオムが出てきて、最初にヴィニエットを見ないで聴くと、いまだに聞き取れない(意味が分からない)ことを正直に告白しておきます。

想像もつかない意味に大変身

 意味が分からない熟語の多くは、中学校で習う簡単な単語なのですが、想像もつかない意味に大変身したりするのです。例えば、red-eye と言われれば、「赤目」としか思いつきませんが、これで「夜行便」「深夜飛行便」の意味なんだそうです(92ページ)。寝不足などで目が充血することから来ているらしいですが、これではまるで連想ゲームですよ。例文が出ていたので引用します。

I was trying to get some shut-eye on a red-eye, but it was impossible.

「現代英語基礎語辞典」92ページ

  う~ん、そう言われても意味が分からんたい。文章でしたら、一生懸命に辞書を引くことが出来ますが、通訳で耳で聞いただけでは、私なんか絶対に誤訳してしまいますね。自信があります(笑)。(これで、「深夜便で少し寝ようかと思ったが、それは不可能だった」という意味になります)

 私なんか半世紀以上も英語を勉強しているというのに、未だに分からないことだらけです。思うに、それは、英語はわずか26文字のアルファベットで構成されるので、何と言っても、日本語と比べただけでも語彙数があまりにも少ない。だから、一つの単語でも色んな意味を持つようになったのではないかと私は個人的に推測しています。例えば、doctorという一つの単語にしても、まず日本人なら誰でも「医者」とか「治療する」といった意味や、「博士号」といった意味は知っていることでしょうが、これが「改竄する」とか「不正に変更する」といった全く別の意味で使われることを知る人は多くはないと思います。

 長年、杉田先生のビジネス英語に親しんできたお蔭で、この本にはテキストで学んだ単語や熟語が出てきます。K9(canine)=犬とか、go for it =思い切ってやってみる、a.k.a.(also known as)=別名、something else=格別、text=メッセージ(名詞)、メールを送る(動詞)などです。

ビートルズの歌詞との親和性

 ところで、私は子どもの頃からビートルズが大好きで英語の歌詞も親しんできました。でも、1960~70年代は碌な辞書がなかったせいか、歌詞の訳も間違っていたり、いい加減だったりしていたことを覚えています。今では、沢山の口語英語辞典も出版されているので大分改善したと思われますが、洋楽ブームはとっくに去ってしまっており、歌のタイトルも、英語の表記をカタカナにしただけの「手抜き」になってしまいました。

 この本で取り上げられている熟語の中には、「あ、ビートルズの曲にあった!」と気が付くものが結構出てきます。例えば、こんな感じです。

・be up to (…次第である)→ You know it’s up to you. “She loves you”

・go-getter (凄腕、辣腕家)→ She’s a go-getter. “Mean Mr. Mustard”

・act your age (幼稚な行動をしないように)→ I have had enough, so act your age. ”You Won’t See Me”

・big-time (大物の、一流の、ぜいたくな)→ Now she’s hit the big-time. “Honey Pie”

・Money can’t buy everything.(お金で全てが買えるわけではない。)→ Money can’t buy me love. “Can’t buy me love”

 ビートルズはもはや古典の域に入ったと思いますが、当時は最先端の口語を歌詞に取り入れていたことが分かります。

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