常に新しいことを学ぶことが大切 「錯覚で学ぶ脳の働き」

ルビンの壺 雑感
ルビンの壺

生涯学習教室

 私が住む自宅近くの公民館で、「生涯学習教室」があり、早速申し込んで参加して来ました。全5回で、「フレイル予防の食生活」とか「日本の世界遺産」とか、高齢者の好奇心をくすぐるような講座が組み込まれています。定員70人なので、抽選で、幸運にも選ばれました(笑)。

 初回は、脳科学研究者の清水龍郎氏による「錯覚で学ぶ脳の働き」でした。清水氏のお名前の「龍」の干支から判断すると、今年73歳ぐらいの人ではないかと勝手に想像してしまいました。1952年生まれのプーチン大統領と同い年かな、と全く関係ないのに、また想像をたくましゅうしてしまいました(笑)。

 実は全く期待していなかったのですが、驚くほど面白い講座でした。しかも、実験と科学に裏付けられた「理論」でしたので、納得せざるを得ませんでしたが、まるで、手品か奇術を見せ付けられたような感じで、ドキドキワクワクしてしまいました。こんな講座をタダで拝見できるなんてしめたもんです。もっとも、しっかり「市民税」を支払っているわけですから、こうした機会を受益することは当然の権利かもしれませんが。

生き延びるために脳が錯覚する

 いやはや、こんなお堅い話を書くつもりはありませんでした(苦笑)。清水氏は、まさに、マジッシャンかエンターテイナーでした。自分自身も楽しんで発表している感じで、元気溌剌で見ている方も楽しめました。その清水氏は、脳が錯覚してモノが見えてしまったり、感じたりしてしまう例を20件以上、例示してくれました。

 例えば、表紙絵にある「ルビンの壺」です。黒いところを中心に見れば「壺」ですが、白い部分を注目すれば、人がお互いに見つめ合っているように見えます。いわゆる「だまし絵」です。こういう絵は、1960年代から70年代にかけて大ベストセラーになった多胡輝「頭の体操」(光文社)でよく出て来たことを思い出しました。今、還暦以上の人でないと知らないかもしれませんが…。

 清水氏は、そんなだまし絵だけでなく、色んな図形や、線の長さや綿と鉄アレイの重さ比較など、「あっと驚く、為五郎~」(古い!)のような事例を見せてくれました。「言葉」でそれらを表現することは困難なので、残念ですが、一つだけ例を挙げますと、スマホの半分ぐらいのサイズの小さな紙を真ん中で半分に折って、折れた部分が内側になっている、いわゆる「谷折れ」の状態で、片目をつぶって見つめます。心の中で、半分に折れた側が前面となる「山折れ」になれ、山折れになれ、と念じながら見つめます。そしたら、あらあら、不思議。本当に、谷折れの紙が山折れになり、首を動かすと紙が動いているように見えるのです。

 まさに、脳の錯覚です。人間は生き延びるために、構造的に脳が錯覚するように出来ている、というのが清水先生の持論です。ですから「ヒトは、世界を正しく見ているとは限らない」「世界はこうだ。あの人はこう言っている、といってもそれらが必ずしも正しいとは限らない」というのです。

情報は受け手によって決定される

 そもそも、情報の意味は、受け手によって決定されるといいます。いくら「これだけ言っても、分からないのですか」と怒っても意味がないことなのです。つまり、発信者がいくら説得しても、たとえ誤解や錯覚であろうとも受け手がそう決定するので、堂々巡りになってしまうというのです。

 要するに、ヒトは自分の思い込みから避けられない、ということなのです。同時に、ヒトは、思い込みに過ぎないことを自覚することが大切だということでした。更迭された江藤拓農水相(64)のように、「自分が間違っていた」と自覚するには時間が掛かります。こういった弊害を避けるには、「何歳になろうとも、常に新しいことを学んで、脳を活性化させることが重要です」と清水先生は力説しておりました。

 はい。非常にためになる講座を拝聴することが出来ました。新聞も雑誌も書籍も読むのをやめてしまったというTさんには再考して頂きたいなあ、と思ってしまいましたが、これも単なる私の「思い込み」です。

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