ピアニストは中国系が世界を席巻していた! ショパン国際コンクール

フレデリック・ショパン(出典 Wikimedia commons) 雑感
フレデリック・ショパン(出典 Wikimedia commons)

 世界で最も有名で権威のある国際音楽コンクールは、ショパン・コンクールかもしれません。ピアノという一つの楽器演奏だけで優劣を競う大会ではありますが、まず知らない人はいないと思います。(他にチャイコフスキー国際音楽コンクールや指揮者の登竜門ブザンソン国際コンクールも有名ですが)

 ショパン・コンクールは5年に一度の開催ですから、優勝者は世界中の楽団から引っ張り凧になります。私の知る限りですが、ポリーニ(1960年)、アルゲリッチ(65年)、ツィマーマン(75年)、ブーニン(85年)が優勝者としてよく覚えています。日本人として最高の2位を獲得した内田光子(70年)、反田恭平(2021年)、3位の横山幸雄(1990年)は、日本のメディア報道でも大騒ぎになったので注目しました。

 そうなんです。いくらショパン・コンクールとはいっても、普通の人には優勝者か、日本人上位入賞者しか新聞では報道されないので、私もその内実や実相についてそれほど詳しく知りませんでした。しかし、先日NHKで放送された「徹底解剖 ショパンコンクール2025」見て、初めてその舞台裏を知ることが出来ました。

 ショパン・コンクールの優勝者で、私がよく覚えているのが1985年のブーニンで止まってしまっている、ということは、それ以来それほどフォローしていなかったということを正直に告白しておきます。だから、その様変わりには本当に驚きました。

圧倒的多数だったユダヤ系

 私が若い頃からCDを買ってよく聴いていたピアニストは、アルトゥール・ルービンシュタインやウラジーミル・ホロヴィッツ、ウラジーミル・アシュケナージ、ルドルフ・ゼルキン、アレクシス・ワイセンベルグといったユダヤ系の人ばかりでした。(ピアニストだけでなく、ヴァイオリニストもヨゼフ・シゲティ、アイザック・スターン、ヤッシャ・ハイフェッツ、ユーディ・メニューインらユダヤ系が圧倒的多数でした)

アジア系が進出

 そしたら、2000年代に入って、アジア系、特に中国人が台頭していたのです。2000年には中国重慶出身のユンディ・リが優勝しましたが、今年の優勝者エリック・ルー(陸逸軒)は米国籍ですが、中国系の人です。2位のケヴィン・チェンはカナダ国籍ですが、台湾系だと言われています。3位に入った女性のズートン・ワン(王紫桐)は中国籍です。

 コンクールはオリンピックではありませんから、国籍は全く関係ありませんが、ショパン・コンクールの第1次予選に進出できた84人のうち、なんとその3分の1の28人もが中国人だったというのです。(ちなみに日本人は、出場者数2番目の13人で、桑原志織が4位に入賞)英国籍やマレーシアの人も参加していましたが、外見の容姿と名前から中国系と見られる人もいましたから、コンクールに進出した半数以上は中国系だったのかもしれません。これには驚きましたね。クラシック音楽の世界的な演奏家といえばユダヤ系だと私は思っていましたが、今や、特にピアニストは、ほとんど中国系の人で占められていたからです。

 これは素晴らしいことだと思っています。音楽に国境はありませんし、ピアノ演奏は、特に難解なショパンは曲芸師的テクニックが要求されますから、手先の器用な日本人や中国人には向いていると思います。

 特に中国は、13億人も人口を擁していますから競争がかなり厳しいことでしょう。でも、やたらと正義を翳して台湾沖で軍事演習を繰り返す暇があったら、芸術家やスポーツ選手の養成に力を入れた方が健康的で世界中から称賛されると思うんですけどねえ。

本選進出は10人

 せっかく、ショパン・コンクールの内幕を知ったので、備忘録としてメモ書きしておきますと、コンクールは、プロアマ問わず、世界中から応募してくる多数の中からビデオ審査や予備審査を経て、第一次予選に通過できる人は84人です。第2次予選に進出できる人は40人、第3次予選には20人、本選に進出できるピアニストは10人(2025年は僅差のため11人)しかいません。審査員は過去コンクールで入賞したピアニストら17人で、日本人は今回、海老彰子、兒玉桃の両氏2人でした。コンクールは10月3日から20日までという長丁場でした(最終審査は5時間に及び、結果発表は翌21日の午前2時頃だったといいます)。

カワイが大健闘

 大会で使用されるピアノは、スタンウェイ、ベヒシュタイン、ファツィオリ、ヤマハ、カワイの5台の中から出場者は15分間の時間制限の中で1台選び、本選まで使用することが決まっていました。私は、ファツィオリというピアノは初めて聞きましたが、44年前に創業した比較的新しい会社で、今回優勝したエリック・ルーが使用していました。これで有名になり市場も広がることでしょう。

 意外にも日本のヤマハではなく、カワイが多くの参加者が選んでいたのには驚きました。調べてみたら、出品されたシゲル・カワイは何と2000万円もする最高級のピアノだったんですね。やはり、クラシック音楽は裕福な家庭の慰めなのかなあ、と思ってしまいました。

 オリンピックでナイキやアディダス、ミズノ、アシックスなどスポーツメーカーが陰で熾烈な争いをしていますが、ショパン・コンクールもピアノ会社のコンペティションだったことも分かりました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました