久し振りに自宅近くの床屋さんに行って来ました。近い、といっても、歩いて17~18分掛かります。炎天下、大変です。
シニア割引2000円の床屋
その床屋さんに行くのは2回目です。シニア割引があることを知ったからです(シャンプー代込みで大人2200円のところ、シニアは2000円)。平日に限ります。昨日も行こうと思って、ネットのホームページで確認したら、そのシニア割引は「平日の午後3時までの来店」に変更になっていました(今年9月1日から)。そこで、今朝の9時開店を目指して出掛けたのです。
そしたら、横断歩道を渡る信号待ちで時間をくったのか、到着したのが午前9時3分で、既に待ち客が何人も座っていて、私は7番目でした。もっと早く家を出るべきでしたね。お蔭で、1時間15分も待たされました。
安いのでお客さんが殺到するのでしょう。自宅の最寄り駅近くに理容・美容専門学校があるせいなのか、街中で、やたらと理容、美容店を見かけます。外の看板を見ると、安くて大人2400円ぐらい。大体3000~4500円ぐらいでしょうか。やはり、カット専門店を除けば、シャンプー代込みで2200円は安いですね。
天皇の理髪師「大場」
もう20年以上昔ですが、床屋さんに凝ったことがあります。維新後、丁髷から散切り頭(断髪令)となり、西洋の近代理髪技術を取り入れなければならなくなりました。その魁の一つに「大場」がありました。明治以来、代々の天皇の理髪師として名を馳せました。私は行ったことはありませんが、現在「OHBA」という名称で東京・赤坂で営業しているようです。1882年創業といいますから、明治15年創業です。
慶応閥の「理容米倉」
私が行ったのは、「理容米倉」です。1918年(大正6年)、築地「精養軒ホテル」で創業。創業者の米倉近は、日本の西洋理髪の祖の一人といわれた篠原定吉の弟子の中でも、三羽烏の一人と言われています。作家の司馬遼太郎の行きつけの理髪店としても有名でした。東大阪市在住だった司馬遼太郎は東京に来た際、ホテルオークラを常宿としていましたが、そのホテル内にある米倉に通っていたそうです。
私が行ったのは銀座本店です。カット、シャンプー、シェーブのセット(御調髪)で、20年前の当時は1万6000円ぐらいしましたが、現在は、1万9250円のようです。いずれにせよ、目の玉が飛び出るほど高いので、元を取ろうと、序に「取材」しました。米倉の御主人は慶応大学出身だそうですが、意外にも老舗理容店の多くが「慶応閥」で慶応出身の人が多いそうでした。お客さんも慶応出身の人が贔屓にするらしく、毎日新聞元主筆で政治評論家の岸井成格(1948~2018年)さんもその一人でした。
偉い人は2000円そこらの理髪店なんかにはいかないんですね(苦笑)。
米倉が創業した精養軒ホテルは、日本で最初の西洋料理店の一つで、西郷隆盛や岩倉具視らも訪れたといいます。森鴎外の小説「普請中」にも登場します。現在、精養軒は上野にあります。
築地精養軒の跡地は戦後、銀座東急ホテルを経て、現在は時事通信社の本社が建っています。私は当時、時事通信社に勤務していたので、御主人とは話が弾みました。その間、確か、御主人は、米倉の歴史として、当初は戦艦長門の中でも営業したことがあるという話を聞いたと思いますが、記憶違いかもしれません。米倉の公式ホームページには、そのことについて掲載されていないからです。
VIPのための「大野」
もう一つは、1934年創業の「ヘアサロン大野」です。「V.I.P御用達理容店」と銘打っています。創業者の日本橋の大野孝次郎も、「米倉」の米倉近と同じ篠原定吉の弟子の三羽烏の一人です。大野にとって、米倉は兄弟子に当たります。一度だけ日本橋本店に行きました。もう20年以上前ですが、米倉より少し安い、カット、シャンプー、シェーブで1万2000円ぐらいだったと思います。確かにVIP(最重要人物)扱いをしてくれて、痒い所に手が届くような、格別に気分が良くなる理容店でした。ただし、そう頻繁には行けません。
そのうち、年を取って髪の毛も薄くなり、切るところも少なくなったので、こんな高級理髪店に通うなどお門違いになってしまいました(笑)。やはり、偉くもない私には2000円の床屋で十分です。
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