「禅をきく会」なる講演会(曹洞宗関東管区教化センター主催)が昨日、大宮ソニックシティで行われたので拝聴しに行って参りました。何しろ、入場無料、事前予約不要なのです。しかも、行ってみたら、配布された資料のパンフレットの他に、ボールペン、メモ帳、付箋までサービスで入っておりました。まさに至れり尽くせりです。
また、しかも、ですが、曹洞宗は、鎌倉時代に道元が開いた伝統宗教ですから、新興宗教やオカルト宗教とは違って、一切、会場での寄付や布勢や寄進の強要行為もなく、高価な壺を買わされることもなく、さらには、「曹洞宗の信徒になれ!」といった勧誘すらないのです。変な言い方ですが、大名商売です。そこで気になるのは、こういったセミナーを開催する費用を何処で捻出しているのか? です。
勿論、原資は檀家衆からの寄進(布施)でしょうが、宗教法人ということで、固定資産税や一部法人税が免除されていることがあります。ですから、こうしたセミナー開催は、純粋な公益事業だと解釈したらいいのかもしれません。
寺院数は曹洞宗が全国一
文化庁「宗教年鑑」などによると、日本の仏教の信者は約8324万人で、宗派別では、①浄土真宗本願寺派(約790万人以上)②真宗大谷派(約790万人以上)③浄土宗(約600万人以上)④高野山真言宗(約380万人以上)⑤曹洞宗(約350万人以上)⑥日蓮宗(約340万人以上)⑦天台宗(約130万人以上)…ですが、寺院数となると、曹洞宗が1万4604寺でトップです。それだけ、全国的に曹洞宗の寺院が意外と多いのです。
しかし、今回の「禅をきく会」で講演した可睡斎西堂(静岡県袋井市)・千葉県広徳寺東堂の石川光学老師によると、昨今の少子高齢化による人口減によって、企業や自治体だけでなく、僧侶になる人も激減し、「志願者」となると、定年退職した60代の高齢者か、日本語すらまともに出来ない外国人が多くなったというのです。(志願した外国人の中には、僧侶になりたい理由について、「ハッピーになりたいから」と答えたそうです。石川老師が「何がハッピーなのか?」と問うと、「来世ではなく、現世に『心の安らぎ』を得たいから」と答えたそうです。その人は7年経ち、日本語も上達して禅問答も出来るようになったそうです)
布施英利先生目当て
今回、私が何故、このセミナーを拝聴することにしたのかと言いますと、第一部の講師が東京芸大教授の布施英利さんだったからです。もう30年以上も昔ですが、彼に一度インタビューしたことがありました。当時、彼は東大医学部の助手で30代前半だったと思います。東京芸大で美術解剖学を専攻しましたが、人体の解剖に立ち合いたいがために、養老孟司先生の下に弟子入りしたのです。レオナルド・ダヴィンチを研究していて、「若いのに、凄い人が現れたなあ」と感心しつつ、解剖学に基づく美術作品の話などを聞いたと思います。が、何せ30年以上昔のことで、細かいことは忘れました。彼も、忘れていることでしょう(笑)。
今回、名前が布施なので曹洞宗の講演会に選ばれたわけではないでしょうが(笑)、曹洞宗とは場違いのキリストの話や、解剖学と美術の話など大変興味深い話ばかりで、もっと聴きたいと思わせました。
解剖学と美術との関係の面白かった話の中で一つだけ取り上げますと、ダヴィンチの有名な「最後の晩餐」です。人間の肘から先の腕は1本の骨ではなく、橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃくこつ)の2本で出来ており、そのお陰で、手首が回り、手のひらを表にしたり裏にしたりすることが出来るといいます。犬や猫の腕の骨は1本なので、前脚の先を裏表できないのです。500年前のダヴィンチは、既にそのことを知っており、人間の腕の解剖図なども残しております。
そこで「最後の晩餐」の話ですが、真ん中にキリストがおり、画面左の6人の使徒は全員、親指を内側(回内)にして、画面右側の6人の使徒は全員、親指を外側(回外)にしているのです。こうしてダヴィンチは、一定の法則と基準によってこの絵を描いていたのです。このほか、「最後の晩餐」は、かなり高度な数理学を使った遠近法で描かれていることは有名ですが、ダヴィンチは解剖学に基づいてしっかり絵を描いていたとは、個人的に驚きのほかありませんでした。

長い布施先生の講演の中で、美術以外で一つだけ、面白かったことを挙げるとすると「呼吸」の話です。人間、意識が忙しかったり、悩みごとが多かったりすると呼吸が疎かになるというのです。吸うことよりも、吐く方が疎かになるというのです。そして、彼は面白いことを言うのです。人は息を吸ってばかりいると「息が詰まる」、大きく吐けば「息抜きになる」。息を吐けば、心も落ち着きます。笑うという行為も息を吐く行為ですーと。
笑えば、免疫力が高まることが実証されていますが、息を吐く行為だったんですね。たまに引き笑いをする人もいますが(笑)。
いす坐禅
布施先生の講演の後、曹洞宗らしく、「いす坐禅」なるものがありました。畳などに座って坐禅をするのではなく、洋式の会場の椅子に座って坐禅をするのです。私も生まれて初めてやりました。「頭の中を空っぽにしますが、雑念が浮かんでも構わない」と言われて、妙に納得出来ました。私もこれから、息が詰まったら、自己流で「いす坐禅」を続けてみようかと思いました。
そう言えば、現在、海外に住んでいる友人のAさんがおります。目下、ちょっと個人的に悩んでいらして、恐らく、呼吸が疎かになっているのではないかと思います。そこで、海外には畳がないので、Aさんにも「いす坐禅」を勧めてみようかと思っています。
Aさんは特定の宗教の信者ではないと思いますが、曹洞宗大本山の永平寺がある福井県出身なので、抵抗なく「いす坐禅」が出来るのではないかと思います。早く問題が解決することを願って。

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