第4回、第5回に続き、ジャーナリストの先輩、匿名A氏の言葉が続きます。
私の脳髄は、匿名A氏の言葉で一部出来ている、と言っても過言ではないかもしれません(笑)。第4回、第5回をお読みになった方でしたら、繰り返しになりますが、A氏の人間観察力は並大抵ではありません。
何の会合だったか忘れましたが、都内の高級ホテルで開かれた財界人の立食パーティーに取材記者として参加した時、A氏も隣にいて、彼は「彼らを見ていると、黒澤明監督の映画のエキストラとして出演してもいいと思いませんか?」と急に言って来るのです。そう言えば、財界人の人相は独特です。まさに人間関係の修羅場を潜り抜けて出世して来たような顔をしています。どちらかと言えば、失礼ながら、悪役が似合っています。
続けてA氏は「出世の野心がある人ほど腰が低いですよ」と急に言うのです。「◯◯さんのように、上司に楯突いて、キャンキャン言っていては駄目なんです。上司が黒と言えば、白でも黒と言わなくてはいけないのです。上司もそれがお世辞だと分かっていながら、ゴマを剃ってくる部下の方が可愛いのですよ」と「人生訓」を披露するのです。
当時、このA氏の言葉を真に受けて、その通り実行していれば、私も社長にでもなれたでしょうが、若かった私は、キャンキャンと上司に反抗して、しまいには左遷職場に飛ばされ、冷遇人生を歩んでしまいました。その一方、私の会社の社長になった人物を見てみると、確かに、表向きは年少の人間に対しても腰が低く、内面に秘めている野心を見せようとしないような人たちばかりでした。
「腰が低い人には気をつけた方がいいですよ。彼らには野心がありますからね」とA氏は、得意気にニヤリと笑います。今やサラリーマン生活を終えてしまった私としては、もはや取り返しがつかない懐かしい言葉です。
もし、若い人がこの記事を読まれたら大いに参考にしてくださいな。

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