ネット社会になり、SNS、特にYouTubeやTikTokなどの動画が幅を利かすようになりました。文字が中心のブログなんて読む人はいません。
私はどういうわけか年少の友人は少なく、年長の友人が多いのですが、彼らは既に70代後半の後期高齢者になっておりますが、そんな人たちでさえ「もうテレビなんか見ない。YouTubeを見てる」と自慢げに話すのです。まだ頭が柔らかい若者なら分かりますが、もう酸いも甘いも知っている分別のある老人までこの有様です。何が彼らをそうさせるのか?
ネット右翼、反ワクチン、陰謀論、選挙運動…とSNS動画にハマった人たちには共通点がある、と喝破した人がおります。その一人が作家の古谷経衡さんです。5月1日付朝日新聞「ネット時代の報道とは」に掲載された彼の論文を読んで、目から鱗が落ちる思いでした。彼の見解をそのまま真似して茲に書くのは芸がないので、彼の意見を少し参考にさせて頂いて、そのからくりを明らかにしたいと思います。いわゆる渓流斎の「反SNS論」です。
真実を報道しないマスコミ
まず、前提として「マスコミは真実を報道しない」という鬱憤があります。私もマスコミ人でしたから、よく分かります。確かにその一面はあります。記者には、自己規制といいますか、本人や当局や主催者らに「配慮」という名の下に、遠慮して書かなかったこともあります。特に大手新聞社やテレビは自分たちが主催する展覧会やイベントやスポーツ大会は大きく報道しますが、関係ないと無視します。その理由は、報道記事の中に「広告宣伝」の要素が含まれているからです(この真実を見つけて創業したのが日本電報通信社(電通)の光永星郎さんです)。
だから、ヒトラーに代表されるように独裁者は宣撫活動としてメディアを利用します。自分たちに都合の良い「国営放送」を利用します。
自分で見つけた達成感
そこで、意欲のある真面目な人たちは、ネット検索して「真実」を追い求めます。新聞やテレビ・ラジオ等から流れる受け身ではなく、能動的です。自分で苦労してやっと見つけた「真実」には達成感があります。何しろ、マスコミではまだ報道されていません。「俺は凄い」「わたしは何て頭が良いのかしら」という全能感を味わうことが出来ます。
逆に言うと、SNSにハマる人は、私のように物事を斜に構えて見るのではなく、何でもすぐ信じてしまう真面目人間が多いのかもしれません。
エコチェンバー
しかし、その人が「真実」だと思い込んでいるSNSは、実は、偽・誤情報である確率が高いのです。多くの人が「いいね!」ボタンを押し、再生回数も何十万回も達成したりしているので、疑うことがありません。むしろ、疑うことができません。何しろ、嘘で凝り固まった同じようなサイトがアルゴリズムによっていくつも出てくるので、再生してしまい、自信を高めてしまいます。いわゆるエコチェンバー(自分と同意見の人とばかり交流して、自分の意見が肯定されることで、その意見が強化されること)です。
自縄自縛状態と言っても良いかもしれません。
インプレ稼ぎと情報操作
しかし、実態は、SNS動画をやっている連中の多くの目的は、閲覧数によって収入を得る「インプレッション稼ぎ」です。だから、内容は真実でなくても偽・誤情報でも何でも良いのです。大衆に目を引く、過激な暴論であればあるほど閲覧数が増える仕組みになったいるからです。
または、そのSNSは、当局や諜報機関による「情報操作」だったりします。こういうのに限って、分かりにくいものです。いわゆるサブリミナル効果(潜在意識に影響を与え、考え方や行動を変える現象)を狙っているからです。
まるで殉教者
その一方で、自分が能動的に苦労して見つけたサイトの閲覧数が少なかったりすると、逆に「これこそが真実だ」と確信します。まさか、陰謀論だと気が付きません。真面目な人は「これは多くの人に知ってもらわなければならない」と、リポスト(再投稿)します。まるで宣教師の心境です。「自分で信じたものこそ正しい」のです。もう宗教です。
逆に、ネット上で貶されたり、迫害されたりすれば余計に燃えます。殉教者気取りです。兵庫県知事選で再選した斎藤知事もそれに当たるかもしれません。
ネットは控えよう
それではどうやってこうしたSNSの呪縛から逃れることが出来るのかー? 一番手っ取り早いことは、先日、このブログで書いたSさんのように、スマホやネットは見ないことです。オールドメディアと蔑まされても、新聞や書籍等を参照して自分の頭で考えることです。
しかし、私も含めて、それは出来ないことでしょう。もう禁断の果実を食べてしまっては、後戻りできないからです。となると、その依存症と中毒症に早く気が付いて「控える」ことしかないですね。SNSは真面目な人ではあればあるほどハマってしまうからです。
救いなことは、真面目で一生懸命に生きている人たちが、そのからくりに気が付き、SNS離れを試みていることです。SNSによる投資詐欺、国際ロマンス詐欺に騙されて、ハタと気が付いたのです。
SNS詐欺は過去のもの?
ネット社会の用語は日進月歩で、古い言葉はすぐ消えていきます。もう既に、「ネトウヨ」も「反ワクチン」も最近あまり聞かなくなりました。そのうち、「SNS詐欺」が忘れられるほど少なくなることを願うばかりです。
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