「アメリカ湾」への名称変更は如何なものか

署名するトランプ大統領 Wikimedia 雑感
署名するトランプ大統領 Wikimedia

  今年1月に米大統領に就任して以来、トランプ氏は矢継ぎ早に「大統領令」に署名しています。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの再離脱や世界保健機関(WHO)からの脱退、それに鉄鋼やアルミニウム輸入品に25%の高関税を掛けること等々です。

 ほとんどの事案が、トランプ氏が大統領に就任する前から予想されていたことなので、「さもありなん」と思いましたが、「メキシコ湾」から「アメリカ湾」への名称変更には驚きましたね。確かに、パリ協定からの再離脱などと比べれば、名称変更など大したことはないかもしれませんが、米国でも保障されいる「表現の自由」に抵触しかねません。

名称変更拒否したAP通信

 これはトランプさん一流の単なる脅しかと思いきや、この名称変更の命令に従わなかったAP通信社の番記者が、「報復」として、ホワイトハウスの大統領執務室での取材を締め出されてしまいました。これは誠に由々しき事態です。一般の人にはあまり知られていませんが、AP通信社は世界最大の通信社で、世界中の約1700の新聞社にニュースを配信し、約5000のテレビ・ラジオ局とも契約しています。世界121カ国に243支局(拠点)があります。ですから、AP通信が、名称変更を拒否する理由として「世界中にニュースを発信する国際的な通信社として、すべての読者が地名を簡単に認識できるようにする必要がある」という言い分は実に理にかなっており、正しい。

 日本のマスコミだって、AP通信の記事の翻訳を垂れ流したり、日本の記者は通常、ホワイトハウスの大統領執務室で取材できないので、さも特派員が直接取材したかのように、AP通信の記事を参照して書いたりしていますから、今回の処置は日本にとっても大打撃と言っていいでしょう。他人事ではありません。

名称変更したGoogleマップ

 その一方で、米グーグルは2月12日、トランプさんの意向に沿って、米国内向けの地図アプリ「グーグルマップ」でメキシコ湾をアメリカ湾 Gulf of Americaに変更しました。この件に関して、メキシコ大統領も、グーグル社への提訴を検討しているといいます。そこで、日本のグーグルマップを見てみたら「メキシコ湾(アメリカ湾)」と表記変更されていたので、正直笑ってしまいました。「中途半端やんけ!」と突っ込みたくなりましたが(笑)、グーグル社はトランプさんに嫌々、従ったフシが伺えます。

 それにしても、トランプさんの行動を見ていると、どうも「裸の王様」に見えて来ます。誰か彼の首に鈴を付けてあげなければならないのに、周囲はイエスマンで固められ、ITのテック長者たち始め、みんな右へ倣いです。というより、むしろ、巨額献金による論功行賞で政権内部に食い込み、自社製品を政府に売り込もとしています。政商そのものです。特に、ロケット企業「スペースX」と電気自動車「テスラ」のオーナーであるイーロン・マスク氏は、政府にテスラの装甲車を売り込もうとしたところ、「利益相反」になる疑いが生じて計画が中断しているといいます。

 「越後屋、お前も悪やのお~」ー。どこか、日本の明治時代の三井、三菱や大倉といった政商と新政府との結びつきを思い起こさせます。

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