「3か月でマスターする江戸時代」はテレビより本の方が詳しい

「3か月でマスターする江戸時代」(NHK出版)1760円 書評
「3か月でマスターする江戸時代」(NHK出版)1760円

 Eテレで、今年(2025年)1月8日から放送開始した「3か月でマスターする江戸時代」という番組を見ています。「3か月」ですから3月26日の第12回分まで続きます。本日2月12日放送分は第6回(なぜ立て続けに「改革」した?①徳川吉宗~田沼意次)ですから、ちょうど半分といったところです。

 期待した番組でしたが、どうもお子ちゃま向けに制作したようで、見ていてこっちが恥ずかしくなる時もあります。解説ゲストの歴史学者さんは毎回のように変わりますが、中には投げやりで、こんな馬鹿らしいことに付き合ってられないといった表情を浮かべる人もいます。これは、あくまでも個人的感想ですが(笑)…。

 でも、この番組のテキストとして発行された「3か月でマスターする江戸時代」(NHK出版)はある程度大人向けに書かれているので、勉強になります。と言いますか、番組では語られない、また、触れられていないことが詳しく書かれています。例えば、浮世絵の値段は1枚16文(約480円)で、かけそば(16文)と同じだったことが本だけには書かれています。類推すると、浮世絵より天麩羅そばの方が高かったということが分かります。

 また、7代将軍家継の時代に起きた大奥のスキャンダルとして有名な「絵島・生島事件」(正徳4年・1714年)がありますが、それ以外に享和3年(1803年)の「延命院事件」と天保12年(1841年)と「智泉院事件」と合わせて「大奥三大事件」と呼ばれることを本書で知りました。これも番組では取り上げられていませんでした。延命院事件も智泉院事件も、日蓮宗の若いイケメンのお坊さんということで「へ~」と思ってしまいました。

 そもそも、テレビと書籍とではメディアの形態が全く違いますが、情報量では圧倒的に本の方が多いことが分かります。テレビは映像と音で視聴者をアッと言わせるだけで頭を通過してしまいますが、活字と写真は残って脳髄に刻まれます。この本は1760円と随分高いなあ、と最初思いましたが、手頃かもしれません。

更新される歴史情報

 歴史学は、新しい発見などの研究成果を反映して年々更新されています。私が学生時代には習わなかったことが多々あります。具体例を挙げますと、日本史の出来事として、645年は「大化の改新」としか昔は習いませんでしたが、今は「乙巳の変」と教えられているそうですね。また、鎌倉幕府成立は、「いい国つくろう」ということで、「1192年」に決まっていたのですが、今では、源頼朝が征夷大将軍に任命された1192年ではなく、頼朝が守護・地頭を任命する権限を持った1185年になったようです。

 江戸時代も同じです。昔は、「鎖国」は当然のこととして教科書で特筆されていましたが、当時は、長崎、対馬、薩摩、松前の四つの口が開かれていた(貿易していた)ことから、厳密には鎖国はしていなかったということで、カギかっこ付きの「鎖国」として教えているようです。また、享保、寛政、天保と合わせて「江戸の三大改革」と私なんかは習いましたが、今では、「三大改革」だけではなく、「正徳の政治」や「田沼意次の改革」なども同等に扱っているようです。つまりは、「江戸三大改革」とは教えていない、ということです。

 これまた、「へ〜」ですよ。時代は変わります。

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