🎬「アプレンティス」は★★★★

映画「アプレンティス」 雑感
映画「アプレンティス」

 1月20日、ドナルド・トランプ氏が4年ぶりに第47代米大統領に就任しました。世界中の人々が戦々恐々としています。「米国第一主義」で世界を再び混沌状態にするのか、それとも、安定した和平がもたらされるのか、彼の言動と一挙手一投足を注目せざるを得ません。

 そんな折り、若きトランプ氏の「変身」を描いた映画が公開されました。イラン出身のアリ・アッバシ監督、政治ジャーナリスト出身のガブリエル・シャーマン脚本の「アプレンティス」(見習い、新米といった意味)です。このタイトルはトランプ氏が2004年から12年にかけて司会を務めたテレビ番組名から取られたものですが、サブタイトルの「ドナルド・トランプの創り方」がその内容にピッタリです。

 繊細で気弱な20代の不動産会社の二代目の若者が、悪名高い辣腕弁護士ロイ・コーンと出会い、大変身して、今や世界中の誰もが知るヤバい「怪物」になる様が描かれています。フィクションの体裁を取っていますが、かなりの部分で史実が反映されており、まるでドキュメンタリー映画のようです。

 特に、トランプ役のセバスチャン・スタン(1982年生まれ、ルーマニア出身)は、金髪のハンサムで、若き頃のトランプ氏によく似ていて、20代から40歳ぐらいまでを見事に演じています。トランプ氏は中年になってかなり肥満になりますが、スタンも演技のためにかなり体重を増量し、本物そっくりです。かなりの女好きで、頭髪が薄くなって人工増毛する場面まで出て来ますが、色んなプライバシーを暴かれたトランプ氏がこの映画の上映禁止を訴えたといいますから、まさに迫真の演技でした。

 悪徳弁護士ロイ・コーン(1927~86年)は架空の人物かと思ったら、ニクソン大統領らとも親密な実在の人物でした。もともと検察官で、熱烈な反共主義者として知られ、ソ連によるスパイ事件「ローゼンバーグ事件」やマッカーシズム旋風の中、赤狩りの急先鋒に立った人物でした。ユダヤ系で、同性愛者であることを隠して、エイズで59歳の若さで亡くなっていますが、最後まで自分は肝臓がんだと主張していたことはこの映画にも出て来ました。

 このロイ・コーンを演じたジェレミー・ストロングは、2024年「エネミー・オブ・ザ・ピープル」でトニー賞の主演男優賞を受賞した名俳優でした。冷酷無比で血も涙もない自信満々の弁護士から晩年は一転して病に苛まれて落ちぶれていく様を見事に演じていました。

勝利のための3原則

 この映画の肝(キモ)は、このロイ・コーンが若きトランプ氏に伝授した勝利するための三つのルールです。

①攻撃、攻撃、攻撃 Attack, attack, attack.

②非を絶対認めるな Admit nothing, deny everything.

③勝利を主張し続けろ You claim victory, and never admit defeat.

 でした。

まさに、我々が見る、自分の敗北は絶対に認めないトランプ大統領そのものが反映しています。

 改めて、ロイ・コーンの凄さを感じてしまいました。

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