北関東にお住まいのHさんから「太平山からのぞむ夕陽」の写真を送ってもらいました。あまりにも素晴らしいので、拙ブログに掲載させて頂くことを了承してもらいました。
私に言わせれば、「これ以上何を望む?」と言っていいぐらいの感動的な景観ですが、Hさんはそうは思わないようです。Hさんは昨年、長年の東京都心での生活を清算して自分の故郷に戻って来ました。故郷とはいっても、18歳まで過ごしただけです。それ以降、大学時代、社会人時代を含めて40年も東京で過ごしてきたので、特別な愛着は薄れています。両親は早いうちに亡くなり、子どもの頃の友人もバラバラでもう滅多に会うことはありません。
何と言っても、北関東特有の気候に辟易しています。山中の地形のせいか、夏は東京以上の猛暑と大雨で、冬は雪も降り、あり得ないほどの寒さです。そのお蔭で、冷房と暖房の電気代が月に2万円も掛かるといいます。
自宅の周囲は80代の高齢者ばかりです。友人もなく、仕事もなく、地理もよく分からない状態で、子どもの頃、父親に車で連れて行ってもらった太平山(341メートル)の麓まで自転車で行き、散策がてらに何十年かぶりに登頂して、撮って来た写真がこれでした。
彼女は、旧い家柄の長女に生まれたという重圧と桎梏から、両親の供養と「墓守」という義務から逃れないと観念して帰郷したようでした。
Hさんにとって、「故郷は遠きにありて思ふもの」(室生犀星「小景異情」といったところでしょうか。
それとも、「これが私の故里だ…あゝ おまへはなにをして来たのだと…吹き来る風が私に云ふ」(中原中也「帰郷」)といった心境なのでしょうか。
今日から早くも師走。私も「嗚呼、お前は何をしてきたというのだ」という感慨と焦燥で胸が張り裂けそうです。
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