ほんの少しだけ、寄席通いを復活させたら、もう少し噺家さんの系統を知りたくなり、ネットで参考文献を探してみました。
落語家には、三遊亭、古今亭、春風亭、笑福亭、柳家、林家…と色々あり、どういう繋がりがあるのか、系統的に勉強したことがなかったからです。要するに落語家の一門の名鑑があるかどうか、探してみました。
「落語ファン倶楽部」別冊「東西全落語家一門名鑑」
そしたら、ありました、ありました。「落語ファン倶楽部」別冊「東西全落語家一門名鑑」です。ただし、2014年4月5日初版ともう10年前の本です。それでも、新刊として売られ、2138円もしました。
恐らく、10年前は当時の最先端で最高峰の名鑑だったかもしれませんが、さすがに、10年も経つと古びてしまい、購入した権利を行使させて頂くと「帯に短し、襷に長し」、要するに中途半端な本だというのが私の感想です。既に亡くなった名人もいますし、真打ちに昇進して名前が変わった噺家さんも結構います。それに、もっと踏み込んで、落語家の系統や歴史を解説してくるのかと思ったら、まさに「一門名鑑」で、写真と感想めいた解説と一門の系図が載っているだけでした。(例えば、例えばですよ、古今亭から分かれて桂が出来たとか、そういったことを知りたかったのですが、歴史的系譜は全く書かれていませんでした)
でも、逆に言えば、この10年前を最後に、落語家の名鑑が出版されていないということなのかもしれません。理由は単純明快です。出版しても売れないからです。コアなファンはいても落語ブームは去ってしまったからです。古今亭志ん生、三遊亭圓生、桂文楽は別格にして、柳家小三治や立川談志、古今亭志ん朝のようなスーパースターが今はいないせいかもしれません。
それでも、春風亭小朝や一之輔や林家正蔵ら人気噺家がいるじゃないか、と言う人がいるかもしれませんが、若い人は本を買いませんからね。それに、落語協会も、落語芸術協会も、落語立川流も、五代目円楽一門会も、上方落語協会も、会員から番組情報に至るまで、最近はネット情報を充実させていますから、特に名鑑は必要がないのでしょう。特に若い人は、自分の好きな「推し」の落語家目当てに聴きに行きますし、そういった人気落語家は個人のホームページを開設してますから、一門がどうの、歴史がどうの、なんて話はどうでも良いのかもしれません。
中途半端な本を買ってしまいましたが、せっかくなので読まないわけにはいきません。パラパラ拾い読みしましたが、10年前の2014年の時点で、既に柳家小さんも立川談志も古今亭志ん朝も亡くなっていたんですね。ですから、「名鑑」としては記載されていません。そちらの方が驚いてしまいました。要するに、時間が経つのはあまりにも早い、ということです。
ところで、私は1990年代の後半に3年間ほど落語記者もやったことがありました。当時は落語協会で真打ちになった噺家さんだけが、会社に来てご挨拶に来られる「年中行事」がありました(勿論、それを記事にします)。その十何人かの新真打ちの中で、今は大ベテランとして大活躍している三遊亭歌武蔵だけが強烈な印象に残っています。何しろ、もともと力士、つまりお相撲さんだったのが転身して噺家になったという異色の経歴の持ち主だったからです。
その歌武蔵は、今ではお弟子さんを持つほど立派な「親方」になりましたが、その弟子の一人が、友人の石田君が贔屓にしている三遊亭志う歌(2020年に真打ちに昇進し、歌太郎から志う歌に改名)だったことが分かり、これまた吃驚です。
嗚呼、私も年を取るはずです。
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