森永卓郎「がん闘病日記」を読了しました

森永卓郎「がん闘病日記」(三五館シンシャ、2024年7月1日初版) 書評
森永卓郎「がん闘病日記」(三五館シンシャ、2024年7月1日初版)

 森永卓郎「がん闘病日記」(三五館シンシャ、2024年7月1日初版)を読了しました。正直に言いますと、個人的に、「闘病記」なるものがあまり好きではありません。苦手なのです。性格的にどうも他人様に共鳴したり同調したりしまうので、とてもページが前に進まなくなってしまうのです。

 それでもこの本を読了したのは、なるべく湿っぽくならないように、むしろ読者に笑いを誘うように書かれていたからです。人気経済学者が書いたこともあり、数理経済学的に放射線や薬物治療などに幾ら掛かり、健康保険がどこまで負担されるのかといったことから、自分の親のことで大変苦労した相続税の話や、これまでの自分がどう生きて、どんな仕事をして来たのか自伝めいた話(彼が日本専売公社=現JT=に就職して、3回の転職を経て何故、経済アナリストになったのか初めて知りました)まで書かれ、とても面白いのです。面白いという言葉に語弊があれば、大変興味深いと言っても良いです。非常に参考になる話が多かったことは確かです。

 著者の森永氏が2023年11月8日、「余命4カ月」の病気を通告され、翌12月27日にマスコミで「膵臓がんのステージ4と診断された」ことを公表すると、著者のところに大量の「アドバイス」メールが殺到したといいます。それら人たちについて、著者は、学者らしい分析で三つのタイプに分けています。

(1)純粋に私の回復を祈ってくれる人=「この本を読んだらいい」「ネットのこの記事がいい」と薦めてくれる。

(2)私を広告塔として利用しようと考えている人=新興宗教のお誘いが典型。

(3)がん治療ビジネス=健康食品一つ数千円、ペットボトル1本が1万円、温熱療法などワンセットで200万円超。

 世の中には他人の不幸につけこむ人が何と多いことか!特に、(3)の高額ビジネスは、著者が有名なベストセラー作家であることを知って勧誘してきたことでしょう。(それでも、治療には高額な医療費がかかることを書いていますので、御興味のある方は本文を参照してください。)

SNS型投資詐欺の広告

 また、森永氏は、自分がSNS型投資詐欺の広告に利用されていることについて、憤懣やるせない調子で怒りをぶつけています。IT専門家の調査によると、「森永卓郎」を騙った詐欺広告は400種類以上あるといいます。中には病気を逆手にとった詐欺もあり、「私は余命が長くありません。そのため、これまでの研究で獲得した投資のノウハウをすべてお伝えしたいと思います」などといったパターンが多いそうです。

 そもそも、著者によると、投資をアドバイスするには、金融商品取引法第29条に基づく登録が必要で、登録者は金融庁のHPで確認できるといいます。「勿論、私は登録などしていません。投資助言業の資格がない私から投資のアドバイスと言われた途端に詐欺と疑わないといけないのだ」と、普段、投資のリスクの方を強調している森永氏はいいます。

 「あとがき」の中で、1957年生まれの森永氏は「私の場合、人生でやり残したことがほとんどないということだ」と書いております。羨ましい限りです。私なんか、まだほとんど何もやっていませんからね(苦笑)。

 いずれにせよ、この本には副題として「お金よりずっと大切なこと」が付けられ、その通り、人生でお金より大切なことについて示唆する事例が書かれています。以前の彼の著作に書かれていたことと重なることも多かったですが、非常に為になりました。

 

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