「フロンティア」は知的好奇心が全開する番組

ネアンデルタール人の家族(Wikimedia Commons) 雑感
ネアンデルタール人の家族(Wikimedia Commons)

 かつて、テレビは全くと言っていいぐらいほとんど見ない時期がありました。当時人気絶頂の「AKB48」すら知らなかったぐらいです(笑)。会社でつけっぱなしになっているテレビのニュースぐらいは見ましたが、テレビは楽屋落ちのくだらない低レベルの番組や態とらしい作為的なドラマが多く、「時間の無駄」だと思っていたからでした。

 しかし、ここ数年は結構見るようになりました。ほとんど録画で、「歴史探偵」や「英雄たちの選択」、「知恵泉」、「偉人の年収」、「偉人・敗北からの教訓」といった歴史物ばっかしですが、最近注目して見ているのが、NHK-BSの「フロンティア」です。天下のNHKさんは、スタッフ(人間)と取材費(お金)が有り余っていますから、民放ではとても作れない高質な番組が制作できるのでしょう。書籍やネット情報では得られない最先端の知識を提供してくれます。

あなたの中に眠る天才脳

 例えば、6月13日に放送された「あなたの中に眠る天才脳」は、うーん、とうなるほど感心しました。写真で見た東京の風景でも数分で全て記憶して細密な絵を描いてしまう英国の少年。円周率2万桁以上を暗唱してしまう英国人の男性らが登場しましたが、彼ら、特殊な才能を持つ人達を50年以上統計的に分析研究してきた米国のトレファート博士によると、彼らの約半数が自閉症であることが分かり、同博士は彼らのことを「サヴァン症候群」と呼びました。

 こうした生まれながらの「天才」だけでなく、事故などで左脳を損傷した人の中に、回復すると急にこれまで弾けなかったピアノが弾けるようになり、作曲まで出来るようになった人や、自然界の様々なものを形作っている「フラクタル構造」を見抜く能力が急に発揮するような人物も登場していました。フラクタル構造とは同じ形が集まって規則性のある構造のことで、巻き貝の内部構造がその一例です。自然界の木々だけでなく、自分の手もフラクタル構造に見えてしまうのです。

 トレファート博士が創設した研究所の調査から、このようなサヴァン症候群の脳は、右半球が大きかったり、右半球の働きが強かったりするという共通の特徴を持つことが分かりました。これは、一般的に、右半球は芸術や音楽の才能など創造的なものを司っているとされ、右半球の働きが強ければ強いほど、驚異的な才能を発揮する可能性が高まるといいます。左半球は言語などの機能を司り、右半球の活動を抑制する働きもあるといいます。だから、左半球が損傷したりすると、右半球が活発になるわけです。

 この番組を見て、初めて天才の仕組みが分かりました。

東洋医学とは何か

 先日再放送された「東洋医学とは何か」も実に面白かったです。1991年に欧州アルプス山脈で見つかった「アイスマン」と呼ばれる約5300年前のミイラには刺青が施されていましたが、実に規則正しく配置されていたので、よくよく調べたら、それらは、東洋医学のツボに当たることが分かったのです。ということは、指圧があったということで、鍼灸も東洋医学が伝わる以前から欧州にあったかもしれないのです。

 それだけではなく、約4万年前に滅亡したとされるネアンデルタール人(旧人類)ですが、見つかった5万年前のネアンデルタール人骨の歯から、食べかすを採取して彼らが何を食べていたか調べてみました。そしたら、明らかに栄養素にはならない植物が見つかり、それらは、胃腸の炎症を抑える漢方の「大健中湯」に近いもので、生薬(しょうやく)として使っていたことが分かったというのです。これは凄い発見です。漢方薬は中国人が発見した専売特許かと思っていましたが、既に、ネアンデルタール人まで知っていたとは! 驚き以外の何ものでもありません。

 「フロンティア」は、知的好奇心が全開する番組です。

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