円安談義

2024年5月9日付朝日新聞朝刊一面 雑感
2024年5月9日付朝日新聞朝刊一面

 トヨタ自動車の2024年3月期決算で、純利益が前年比101.7%増の4兆9449億円と発表されました。4兆円超は、国内製造業では初めてだといいます。

円安で儲けた?

 大々的には報道されていませんけど、これは、2022年から始まった急激な円安の影響に他ならないことでしょう。しかし、目下、円安は物価高騰を招き、庶民にも悪玉コレステロールのように蛇蝎視されていますから、まさか、「円安のお蔭」とか「円安で儲けた」なんて百歩譲ってもトヨタさんは言えないことでしょう。企業努力のお蔭なのですから。

 今や、「円安は悪」の論理がまかり通っていますが、自動車業界だけでなく、円安の恩恵を受けている職種もあるはずです。例えば、円安で日本に殺到する外国人観光客相手の商店とか観光業界とかです。

 何が言いたいのかと言いますと、何でも物事には裏表があり、功罪があり、良い点悪い点があるということで、一面だけ観てみては物事の本質を見失う恐れがあるということです。もっと、複眼的に見たり、相手の立場になって視点を変えたりすると、まるで違う世界が展開されるということです。勿論、急激な円安の背景には、投機筋がからんでいることは容易に推測されますが。

 私はジャーナリズムの仕事に携わっていますが、とかくメディアは、悲観主義に陥る傾向があると思っています。戦争や事件や事故、脱税、汚職などを扱うので、それは仕方ないかもしれませんが、登場人物は極端に不幸な人だったり、運に恵まれなかった人だったり、SNS広告で騙されたりする人などが大半です。たまに「美談」でも書こうものなら、「世の中そんな甘くない」とか「そんなことはない。絶対に裏があるはず」と批判されたりします。確かに、マスコミは「建前」しか書きませんからね。

操觚者は天邪鬼

 でも、怖ろしいことに、発信する側のメディアが悲観主義になっているお蔭で、受信する側の一般の人々も猜疑心が強くなっているということです。

 でも、あれっ?です。新聞の役割が「社会の木鐸」だとしたら、いとも簡単に騙される国民になるより、ある程度、猜疑心を持った人間になった方が良いという考え方もあります。これは、複眼的思考です(笑)。

 何と言っても操觚者は天邪鬼ですから、「円安は悪玉」論が跋扈すると、「いや、そうではない側面もあるんですよ」と言いたがるものなのです。難しい言い方をすれば、「極論を排して中庸を唱える」ということになりますか。

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